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ロリータ/魅惑者 (ウラジーミル・ナボコフ著:新潮社ナボコフコレクション)

 非常に有名だが、実はあまり読まれていない文学作品というものは結構あります。例えば「ドン・キホーテ」などは、縮約版というか一部を切り取ったものが世間に流布していますが、作品全体を読んでいる人はかなり少ないでしょう。また「フランケンシュタイン」は、「狂気の科学者に創造された怪物が創造者に牙をむく」という部分のみが知られていて、ついにはフランケンシュタインが怪物の名前だと間違えられている始末です。今回取り上げるナボコフの「ロリータ」もまた、そのような作品の一つではないでしょうか。そう思ったのは、この作品から生まれた「ロリータコンプレックス(ロリコン)」という言葉の現在の日本における使われ方の軽さと、この作品の内容とのギャップに今回初めて読んだ私自身も驚いたからです。

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テーマ:読んだ本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

最強生物 (城戸みつる著:ネットコミック)

 偶然見つけたネットコミックですが、動物界最強を自認する主人公の毒ゴリラが自らを遥かに上回るライバルたちに圧倒され、最後にそれらライバルたちをも馬鹿にする不用意な人間の言動に、ライバルたちと共に制裁を加える、というスピード感が中々です。さらに、「最強生物ランキング」のランカーたちが、ぶっ飛んでいながらもそのランキングが納得の行くもので、そのぶっ飛んだ面子への毒ゴリラの突っ込みが一々尤もで笑ってしまいます。
城戸みつる:作者本人のTwitterです。
最強生物:こちらの方が、3話がまとまっていて読みやすいかも。
 以下に6位から1位までの「超」動物たちを紹介しておきます。

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テーマ:漫画 - ジャンル:アニメ・コミック

アーヴァタール (ポール・アンダースン著:創元推理文庫)

 これもまた、ずっと昔から題名は知っていたものの今回初めて読んだアンダースン作品です。その当時は単語の意味が解らず「奇妙な題名だな」と思っていたのですが、実は原題の"The avatar" すなわち「アバター」そのままでした。この単語の日本語訳が「アバター」で定着したのはおそらく1990年ごろに現在のネットの前身であるパソコン通信サービスでユーザーの分身キャラクターを意味するようになってからであり、従ってこの作品が翻訳された1981年にはまだ一般的な単語ではなく、翻訳も試行錯誤されていたのでしょう。しかし「アバター」という邦題にしていたら、今頃は確実に例の映画の原作と間違われていたでしょうね。なおこの作品でのavatarは、神にも等しい異種族の分身キャラクターそのものではなく、彼らと他の種族とが接触するために彼らに作られた者たちを意味します。
 さて1978年に描かれた本作の展開は、A.C.クラークの「2001年宇宙の旅」(1968年)とステープルドンの「スターメーカー」(1937年)そしてアンダースン自身の「タウ・ゼロ」(1970年)という三つの名作SFを合わせたとでもいうべきものです。ただ上巻の訳者あとがきにもあるように、二人のイギリスSF作家の人類への達観というか突き放しとは異なり、アンダースンはもっと主人公たちあるいは読者に優しいというべきか、最終的に主人公たちの生還と勝利を描いてきます。このあたりは「人間の勝利」が基本にあるアメリカSFとイギリスSFとの違いが見えているように思います。また、Tマシン網によって未知の時空を彷徨い続ける宇宙船内での濃厚な人間模様の描写は、8年前に描かれた「タウ・ゼロ」での同様な状況よりも人数が少ない分より濃厚で、また北欧的な性的放縦さを感じさせます。
 SF的な主題となるのは超種族「アザーズ」の残したスターゲート「Tマシン」なのですが、そこに飛び込んでのオデッセイが始まるのは「2001年宇宙の旅」同様に物語の半ば過ぎであり、それ以前の部分は人類の未来を選択する政治的対立が主題となっています。莫大な費用と労力を掛けてTマシン網の探索を行い宇宙を目指すか、あるいはその費用と労力を荒廃から完全には立ち直っていない地球の復興と平和に向けるかという選択は、作者自身は多くのSFファンと同様にもろ手を挙げて前者を支持しているものの、実際には悩ましい問題です。もちろん作中では後者の首魁であるアイラ・クイックが前者の支持者である主人公たちに悪辣な陰謀を巡らせていくので、読者的には前者を支持せざるを得ないのですが、公平な立場から見たときは果たしてどちらが正しいのか。現実世界で言えば、地球温暖化による全世界的な気象災害の急増への対策に莫大な費用が掛かるなかで、月や火星に人類を送る計画に巨額の費用を投ずるのが正当化されるかという問題と同様です。アンダースンが筋金入りのリバタリアン(個人の自由に対する規制に徹底的に反対する立場)であるという事が確か「タウ・ゼロ」の解説に書かれており、それを読んだ時点ではピンとこなかったのですが、こちらの作品では彼のその思想がかなりはっきりと主張されています。

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テーマ:読んだ本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

訃報:フリーマン・ジョン・ダイソン

 2月28日に、イギリス生まれの理論物理学者であるフリーマン・ジョン・ダイソン (Freeman John Dyson)が亡くなりました。正直に言うと、また御存命だったのかとかなり驚きました。1923年12月生まれですので96歳の大往生です。
 高名な理論物理学者であるダイソンですが、SF読みにとってはそれ以上に「ダイソンスフェア」の提唱者として有名な方です。実際には球としてしまうと科学的に無理のある人工重力を想定しないといけないのに対し、「リングワールド」で描かれた「ダイソンリング」ならば回転によって内面に疑似重力が作れるので、はるかに「現実的」な存在となります。もちろんそのために必要な工学的強度は現状の材料を大きく超えるものとなる上に、力学的安定性等のやっかいな問題があるので、建設可能としても相当な超技術が必要となるのですが。

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テーマ:星・宇宙 - ジャンル:学問・文化・芸術

「ウルティマ・トゥーレ」の正式名称は「アロコス」に

 2019/1/1にNew Horizons探査機が接近観測した太陽系外縁天体2014MU69は、その後「ウルティマ・トゥーレ」と呼ばれていました。しかしこの名は観測チームによる愛称であり、国際天文学連合による手続きを経た正式名称ではありませんでした。一般報道がほぼされていなかったので今まで気が付いていませんでしたが、昨年11/13に「アロコス」(arrokoth)という正式名称が与えられていました。「ウルティマ・トゥーレ」の正式名が「アロコス」に決定

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