ドニャ・ペルフェクタ -- 完璧な婦人 (ベニート・ペレス=ガルドス著:現代企画室)

 ベニート・ペレス=ガルドス(Benito Perez Galdos)は19世紀から20世紀初めにかけて活躍したスペインの国民的作家で、スペイン国内では歴史小説シリーズ「国史挿話」が最も有名ですが、他にも当時のスペイン社会をリアルに描いた多くの小説や劇作を書いており、ここで紹介する「ドニャ・ペルフェクタ」もその一つです。今回はGreenさんによるこちらの記事で興味を持って読んでみました。翻訳者の大楠栄三氏によるかなり長い年表と解説が巻末にあり、著者ペレス=ガルドスの生涯や彼の作品が同時代あるいは現在のスペインにおいてどのように読まれ評価されているのかが詳しく解ります。なお彼の作品のいくつかは同国人ルイス・ブニュエルによって映画化されていて、以前に紹介した「ナサリン」もその一つでした。
 一見すると、開明的な主人公ペペ・レイと叔母ドニャ・ペルフェクタを筆頭とする旧弊なオルバホッサ社交界との対立とその結果の悲劇と見えるこの作品ですが、実際にはそう単純ではありません。進歩思想を徹底的に敵視してペペ・レイに対して陰謀をめぐらすペルフェクタばかりではなく、ペペ・レイの方もまた解説にあるスペイン人特有の「情念」に囚われており、いわば情念同士の対立によって事態はどんどんと悪化して破滅的結果へと導かれていきます。ペルフェクタを筆頭とするオルバホッサ社交界の偽善的な悪どさは明らかですが、ペペ・レイも考えなしに思った事を口に出して相手を不快にさせる人物であり、さらにはロサリオへの情熱に駆られ周囲を巻き込んでの暴走によりオルバホッサと政府軍との戦闘を招いてしまうなど、かなり迷惑な人物です。そもそもかなり近い身内である甥のペペ。レイにペルフェクタが敵意を持ったのも、彼が無思慮にオルバホッサをこき下ろしたのが元々の原因であり、そう考えると彼の運命もいわば自業自得な面があります。

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2015年学習到達度調査(PISA)と日本の生徒の読解力低下

 今月初めに発表された2015年学習到達度調査(PISA)の結果において、日本人生徒の読解力の平均点が大きく下がり、各国別での順位も落としました。これに関して専門家の分析がいくつか出ていますが、私がなるほどと思ったのは、国立情報学研究所の新井紀子教授によるものでした。新井教授は、一つ前の記事にある「東ロボ君」の開発過程で日本の中高生の読解力に関して独自の調査を行っており、その結果として教科書レベルの文章が理解できない生徒がかなりいるようだと述べています。
国際学力テスト:語彙不足に警鐘 読解力低下で専門家
以下が毎日の記事にある調査例の問題ですが、「男性」や「女性」という回答が半分以上出るのは確かに危機的状況かもしれません。「女性」の選択が一番多い事から想像すると、単に「愛称」という言葉の意味を知らないだけではなく文章自体がまったく理解できず、問われている「Alexandraの愛称」と本文中で一致している部分の直前から「女性」を拾っているだけではないでしょうか?とすると、東ロボ君を始めとする「人工知能」が文章題に回答するアルゴリズムである「パターンマッチング」をより悪い精度でしか行えないのが多くの中学生・高校生であり、それだからこそ彼らは東ロボ君に劣っているという納得の行く結論にたどり着きます。

Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある。
 この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから一つ選びなさい。
 Alexandraの愛称は(  )である。

  中学生の解答
(1)Alex(正答)    38%
(2)Alexander    11%
(3)男性        12%
(4)女性        39%

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東ロボ君と人工無脳

 人工知能として東大入試の突破を目指していた「東ロボ君」ですが、昨年の段階で私立大学の8割には合格できるレベルにまで到達したものの今年の成績はむしろ伸び悩み、東大合格という当初の目的は達成できないと結論されて計画終了となりました。実は、東ロボ君が試験に回答している方法を見てみると、その実態は通常考えられている「人工知能」とは遠く、むしろ「人工無脳」に近いもののように私には思われます。

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ヨーロッパ・ロシア共同の火星探査ミッションExo Mars

 ヨーロッパ・ロシア共同の火星探査ミッションExoMarsによる着陸実証機Schiaparelli(スキアパレッリ)が着陸直前に消息を絶ち、どうやら着陸前にエンジン噴射が止まって墜落した模様です。
着陸実証機「スキアパレッリ」は火星に激突の可能性
ExoMarsミッションは2016年3月14日に打ち上げられた微量ガス周回探査機(Trace Gas Orbiter; TGO)と着陸実証機Schiaparelli、そして2018年打ち上げ予定の探査車の3つで構成されており、火星の大気を調べて現在の火星で地質学的、生物学的な活動が起こっているかどうかを調べるのが目的です。
欧・露の探査ミッション「エクソマーズ」が火星に向け出発
今回失敗したSchiaparelliの主な目的は将来のミッションに向けての大気突入、下降、着陸技術の実証で、着陸後には短期間ながら表面での環境調査を行う予定でしたが、全て水泡に帰しました。改めて惑星探査の困難さと、はるかに遠い冥王星でも正確に作動する探査機を運用したNASAの技術力のすごさを再認識しました。尤も、火星周回軌道上のTGOの方は特に問題なく作動しているようなので、こちらのミッションで予定以上の成果を出してほしいものです。

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「確信犯」という言葉

 日本語の乱れや変化という話になると、必ず具体例として登場するのが「確信犯」という言葉です。元々の意味は「政治的・宗教的などの信念に基づいて正しいと信じてなされる行為(その行為を行う人)」であり、一方でもはや大部分の人が「悪い事だとわかっていながらなされる行為(その行為を行う人)」という意味で使っており、間違って使われているあるいは意味が変化しているという訳ですが、実際の所この両方の意味は本当に異なるものなのでしょうか?
 後の解釈において、「悪い事だと判っている」というのは、どの視点から見て「悪い事」なのかが問題で、例えば明確に違法行為であるという点で「悪い事」であっても、行為者の心の中で悪いと思っていなければそれは前の解釈での「確信犯」ではないでしょうか。その根拠が明確な宗教的なものではなく、例えばサイコパス的な人物が「自分は凡人の法には縛られない特別な人間だから、この行為は自分には許される」と確信して行う悪事も、正に「信念に基づいて正しいと信じてなされる行為」に当たるように思えます。さらに言えば、平凡な人間が信号無視をする場合も、心の中では「この信号を無視しても何も問題が起きないのだから、無視する事は許される」と自己の行為を正当化しているはずで、これも信念に基づいて正しい(少なくとも間違っていない)と信じて行う行為ではないでしょうか?私の感覚では、本当に「悪い事だとわかっていて」ある行為を行う人間は存在しないように思います。

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