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地には平和を (小松左京 著:阿部出版)

 日本SF界の巨星のデビュー作(1961年)です。実はタイトルにある本は、この作品を巻末として著者の作家デビュー前の(出版時点での)未発表作品4編を合わせた短編集で、残りの4作は「純文学」であり正直言って私にはあまり理解できないものばかりでした。そもそも「地には平和を」を今回読んだ理由は、この作品のラジオドラマを子供のころに断片的に聞いたのを思い出したからです。検索してみたところ、1980年のゴールデンウイークに5回に渡って放送されたようで、「5回」という回数からそれなりの長さのある作品と思っていたら、実際には50ページほどの短編でやや驚きました。ラジオドラマ資源:1980年

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テーマ:読んだ本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

誓願 (マーガレット・アトウッド著:早川書房)

 以前にレビューを書いた「侍女の物語」の続編で、1985年に書かれた前作から30年以上も後の2019年の作品です。物語世界の中では前作のオブフレッドの逃亡事件から15年後の設定らしいのですが、カバー折込の紹介やレヴューではそう書かれているものの、作中では特に年代設定が明かされていません。さらに言うと、主人公の少女2人が「侍女の物語」の主人公の娘である、というのも、「その可能性もある」程度にしか明かされていないように思います。
 前作では主人公が「侍女」であり、さらにクーデター以前も社会状況にそれほど明るい女性ではなかったために、ギレアデ共和国の国内外の状況がほぼ見えないままでしたが、続編のこちらでは主人公の一人であるリディア小母がギレアデ国内の女性トップとして隠然とした権力を持っているため、国内外の状況がある程度詳しく語られています。ギレアデの領土は旧合衆国の後継国家としては最大ではあるもののテキサス州は独立国家としてギレアデと初期には戦争状態にあり、また西海岸諸州もギレアデと紛争を続けているようです。また「侍女の物語」でも触れられているように、カナダはギレアデの女性たちの最大の脱出先となっており、当然の事ながら両国間は緊張関係が続いています。
 「侍女の物語」ではひたすら強面な「権力の犬」として描かれていた「小母」たちですが、彼女らは国内で唯一公に文字が読める女性階級であり、単純にギレアデの政体を支えるものではなく、体制に適応できない女性の駆け込み寺になるなどより複雑な立ち位置を占めています。特にアルドゥア・ホールのトップに位置するリディア小母は元々は家裁判事という知的階級の出身であり、ギレアデ成立時のクーデター直後に舐めた恐怖と屈辱を決して忘れず、体制への忠誠を装いながら密かに復讐を誓ってギレアデ指導部の秘密情報を収集しています。それもあって司令官たちも彼女やアルドゥア・ホールには容易に手出しをできず、秘密警察トップで事実上の最高権力者であるジャド司令官ですら、彼女には一目置いている状態です。
 このジャド司令官はギレアデ建国メンバーの一人で、当初は特に有能とは見なされていなかったものの、秘密警察トップに就いてから次々と政敵を粛清して最有力の司令官となった人物で、リディアへの屈辱的な拷問を命じた当人でもあります。同時に彼はかなりのロリコンで、幼な妻を娶っては数年で始末して次の妻を娶ることを繰り返すという悪癖を持ち、リディアにはその証拠もつかまれています。ほぼ明らかに、スターリン政権下の秘密警察トップだったベリヤがモデルになっているのでしょう。

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テーマ:読んだ本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

百億の昼と千億の夜 (光瀬龍・萩尾望都:Akita Bunko)

先日紹介したSF小説の萩尾望都によるコミック化作品で、1977-1978に掛けて週刊少年チャンピオンに連載されたものの文庫版です。さまざまな解釈が可能な難解な原作の萩尾望都の解釈によるコミック化な訳で、絵の存在による状況説明の明確化だけではなく、原作から一部の展開が改変されていることもあって、原作よりははるかに分かりやすい内容になっています。それでも少年向けのコミック誌で連載するには相当に難解な話であり、さらに「誰が読んでも理解できる分かりやすさ」が好まれる現代では、もはやそのような形での発表は不可能かと思います。

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テーマ:漫画 - ジャンル:アニメ・コミック

百億の昼と千億の夜 (光瀬龍 著:ハヤカワ文庫JA)

 先に書いた「北北東を警戒せよ」の著者の非常に有名な代表作です。実は私は海外作家のSFに比べ日本人作家のSFをやや軽視していた、少なくとも敬遠していたきらいがあり、これまでこの作品もタイトルはよく知っていたもののきちんと読んだことがなく、今回初めて読み通したことになります。ただし私が今回読んだのは1973年版で、後に結末部分が加筆された「決定版」が存在するようです。
 

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北北東を警戒せよ (光瀬龍 著:朝日ソノラマ文庫)

 昨年7月初めからまたしても10か月近く更新が途絶えてしまいましたが、再びというより三度更新を再開しようと思います。
 今回取り上げる「北北東を警戒せよ」は、私が子供時代におそらくは雑誌(子供の科学?)の連載で部分的に読んだジュブナイルSFで、調べてみると1969年の作品となっています。私の年齢からすると、もしその雑誌連載が初出だとするとリアルタイムで読めたとは到底思えず、例えば友達の家かどこかでバックナンバーの形で切れ切れに読んだのかもしれません。実際今回改めて読んだところ、記憶していたのは中盤から終盤にかけての一部で、しかも結末はまったく覚えていませんでした。作者の光瀬龍氏は1928生まれで、ジュブナイルSFだけではなく一般SF作品、さらにはノンフィクションものなど幅広い作品を発表している作家で、恐らく最も知られた作品は漫画化もされている「百億の昼と千億の夜」でしょう。

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