ハローサマー・グッドバイ (マイクル・コーニー著:河出書房)

 以前に紹介した「ブロントメク!」と同じ作者の長編SFで、やはり地球とは天文学的条件の大きく異なる惑星での生態系を扱うと共に、ドローヴとブラウンアイズという若い恋人たちを主人公とする青春小説でもあります。piaaさんがブログで絶賛していたので私も読んでみましたが、なるほどSFとしてはやや粗いものの、非常に面白い作品でした。
 舞台となる惑星には地球人によく似た原住民が生活しているものの、この時点では地球とは接点がなく、彼らは地球からの植民者の末裔などではなく、この惑星で独自に生まれた種族です。この作品の続編となる「パラークシの記憶」では、同じ惑星の恐らく1000年以上後の出来事を描いており、そちらでは地球人が舞台の惑星に到達しているのですが、「ブロントメク!」と共通する世界なのかははっきりしません。正直なところ、この「ハローサマー・グッドバイ」で残された謎の多くが続編の「パラークシの記憶」において解決されることになるので、こちらだけ単独でレビューを書くのはやや難しく感じます。そのため以下では主に舞台となる惑星と生態系について記載しておきます。

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バベル-17 (サミュエル・R・ディレーニー 著:ハヤカワSFシリーズ)

 以前に紹介した「ベータ2のバラッド」の作者の代表作です。実はかなり以前から作品名は知っていたものの、実際に読んだのは今回が初めてで、「美女艦長が率いる宇宙船の、異形のエイリアン(実際には肉体改造をした人類)を交えたクルーの冒険」という典型的なスペース・オペラの形式を持ちながら、ニューウエーブSF特有のアイディアが主題となっている不思議な作品でした。
 主題となるインベーダーの謎の通信「バベル-17」とはどうやら人造言語であり、それも通常の言語ではなくむしろコンピュータ言語に近いものと思われます。それは「私」(一人称単数)の概念が存在しない言語であるとか情報伝達速度が非常に速いという点だけでなく、それを受け取った相手の人格を乗っ取って思い通りに行動させるというコンピュータウイルスを連想させる能力に現れており、それを武器として用いるというアイディアは現在を先取りしている感があります。また登場する宇宙船の管制システムも海軍の戦艦を模した古典的スペースオペラのそれとはかなり異なり、三名の航宙士の精神的な繋がりやさらには肉体的には死亡した「霊体人」のクルーが重要な役割を持つなど、いかにもニューウェーブ的なものになっています。

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ブロントメク! (マイクル・コニイ著:サンリオSF文庫)

 マイクル・コニイは1932年に英国のバーミンガムに生まれ、処女作を発表したのが1968年というかなり遅咲きのSF作家です。所謂ニューウエーブ系の作家の一人として主に70年代に活躍し、この「ブロントメク!」も1976年の作品です。なお、1972年にカナダのバンクーバー島に移住しており、2005年にブリティッシュコロンビア州でなくなっています。以前に紹介した「恋人たち」で触れたpiaaさんのブログレヴューで、この作品が「恋人たち」と似てると書かれており、興味を持って読んでみました。なるほど、特に作品のポイントとなる無定形生物「アモーフ」が恋人たちのラリサと重なっており、また舞台となる惑星アルカディアが銀河規模の超巨大企業ヘザリントン機関に惑星ごと買収させてしまう原因となった惑星の生態系描写なども含めて確かに「恋人たち」を思わせます。この惑星の生態系はSFとしても非常に魅力的な題材で、この作品自体ではそれほど展開に関係しないのですが、1973年に書かれた本作の前日話 "Syzygy"で主題として使われているようです。
 ところでこの「ブロントメク」という作品名は、作中に登場する半自律型巨大トラクターの名前から取られています。実のところ同じくヘザリントン機関がアルカディアに持ち込んだアモーフの方がはるかに作品の展開に直接関係しているので、ブロントメクの方をタイトルとしているのはやや奇妙な感じがしますが、惑星全体を買収した巨大企業が住民の意思など意に介せずに力ずく金ずくで開発を推し進めるその象徴としての巨大トラクターの大群と考えると、確かにこちらの方が作品名にふさわしいのかもしれません。これはまた、現在の日本でも沖縄や原発の集中立地する過疎地域で普通に見られる構図です。
以下の追加部分はネタバレとなります。

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人間以上 (シオドア・スタージョン著:ハヤカワ文庫SF)

 以前に紹介したヴィーナス・プラスXの著者シオドア・スタージョンの代表作で、1952年に発表された中編「赤ん坊は三つ」に主人公がそれぞれ異なる前・後編「とほうもない白痴」と「道徳」を加筆して一つにまとめ、1953年に出版されたのがこの「人間以上」です。そのためか作品全体としてのまとまりがやや悪い印象を受けました。特に他者の意思や記憶を操作する能力を持つ主人公ヒップ・バロウズと精神科医スターンとの会話の形式をとる「赤ん坊は三つ」はストーリーが追い難く、これが単独で発表された時点では理解できない読者が多かったのではという気がします。この作品自体が、ヒップの記憶抑制の謎と彼の能力の恐ろしさを描いているが解りにくい「赤ん坊は三つ」に、ホモ・ゲシュタルトの誕生までを描く「とほうもない白痴」と、善悪を考えずに無批判に自分たちの能力を使おうとするヒップを「頭」とするホモ・ゲシュタルトに善悪の概念を与える者が加わり正しい者となる「道徳」が加わって、一つの作品となっている訳で、不完全な能力者たちがまとまって完全なホモ・ゲシュタルトとなるというテーマを体現しているようにも思えます。

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恋人たち (フィリップ・ホセ・ファーマー著:ハヤカワ文庫SF)

 「階層宇宙」や「リヴァーワールド」シリーズなど奇想天外な世界での冒険SFで有名な作家フィリップ・ホセ・ファーマー(1918--2009)の、1953年に発表された事実上のデヴュー作です。piaaさんのレヴューで興味を持ち、図書館で借りて読んでみました。それまでの米SFのタブーを打ち破った「セックスをテーマにしたSF作品」と紹介される事が多いようですが、少なくとも現在の感覚から言うと特にエロチックな描写はなく、ただ異星人の人類とは全く異なる性のあり方とその進化を描いている作品です。日本語で「セックス」というと「性」よりも「性行為」の方を指すのが普通なので、「性をテーマとした」という方が適切と思われます。巻末の訳者(伊藤典夫氏)による解説にある「1940年前後に氾濫したバルブ雑誌の多くは、きまりきって裸女と怪物の表紙で読者を釣っていたが、その中身は生殖器などありそうもない男女が右往左往するだけ」という表現には笑ってしまいましたが、指摘されてみると確かにその通りです。「火星のプリンセス」でのデジャー・ソリスに迫る邪悪な緑色人を始めとする半裸の美女を襲う宇宙怪物たちの目的が一体何なのか、全く異なる種族の間に性交渉が存在し得るのか疑問ですが、性のタブーのためこの時代のSF作中には何も書かれていません。確かアーサー・C・クラークの皮肉にあったように、「ベム虐待防止協会が、ベムたちがやろうとしている事をヒーローが妨害するのをやめさせてほしい」というのもごもっともです。

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