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トリポッド 3 潜入 (ジョン・クリストファー著:ハヤカワ文庫SF)

 前話でトリポッド支配に対するレジスタンス組織の拠点である「白い山」(アルプスのどこか)にたどり着いた主人公ウィルとヘンリー、ビーンポールですが、実はレジスタンス指導者すらトリポッド自体が自律機械なのかそれとも他の生物が乗っているのかも解ってない状態でした。それを含めて敵の正体や弱点を探るため、ウィルらはドイツのライン川?流域のどこかにあるトリポッドの都市に競技大会の優勝者として潜入作戦を行います。
 この大会は体力のある若者を選抜して都市での奴隷として使うためのもので、いくつかもの種目があるものの、優勝するためには相当の運動能力が必要です。レジスタンス拠点が空気の薄い高山にあるため、そこで生活しているレジスタンスたちは平地の人間より体力があり、従って大会でアドバンテージがあるというのはなるほどの説明ですが、実はこの話は前話から1年しか経っておらず、それだけの期間でウィルらが高山に適応したのかは正直疑問が残ります。

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トリポッド 2 脱出 (ジョン・クリストファー著:ハヤカワ文庫SF)

 前話での征服からおよそ100年後の世界を描いた本作は、1967年に発表されたオリジナル三部作の第一話となります。
 トリポッドに完全に支配されたこの時代、征服前の科学技術文明はほぼ完全に失われ、人々は中世封建時代さながらの暮らしをしています。生まれた子供は14歳になると、トリポッドによって金属メッシュ状の皮膚と一体化した「キャップ」を被せられる「戴帽式」という儀式を受けますが、キャップを被った者(キャップ人)はほぼ好奇心を失い、トリポッドの支配に対する一切の疑問を失ってしまいます。どうやらこの金属製キャップはトリポッドへの忠誠心を受け入れるように脳にシグナルを送り続ける装置らしく、「トリポッド1」での描写では、征服時に使われた旧来のキャップの恒久的な「改良版」のようです。

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トリポッド 1 襲来 (ジョン・クリストファー著:ハヤカワ文庫SF)

 以前から他の方のブログで気になっていたジュブナイルSF作品で、今回図書館で借りて読んでみました。元々のトリポッドシリーズは異星からの侵略者によって支配された地球を描いた作品として1967-68に発表された三部作なのですが、その前日譚として1988年に新たに発表されたのが、今回紹介する「襲来」です。ジョン・クリストファーは1922年生まれの英国SF作家で、当初は「トリフィド時代」等で有名な同じ英国SF作家のジョン・ウィンダムと共にアポカリプス系本格SFの騎手と目されていましたが、現在ではこの「トリポッドシリーズ」を始めとするジュブナイルSF作家として知られています。
 おそらく1970年代の地球の米国・ソ連・英国にそれぞれ現れた三機のトリポッドは、通常兵器によってあっさり破壊され重大な脅威とはみなされなかったものの、実はその後の巧妙な侵略の前触れにすぎなかったという展開は、三本足歩行の巨大機械であるトリポッドの姿から容易に連想されるH.G.ウェルズの「宇宙戦争」のオマージュであるのはもちろんですが、おそらく最初のトリポッドは偵察にすぎず、それらが集めたデータを利用した洗脳によって本格的な侵略が行われるというのは、20世紀当初の古典SFでの武力侵略をより現代化したものです。単純な武力によるものではないこの巧妙な侵略に有効な手を打てずに、地球文明はあっさりと崩壊し、人々はトリポッドを崇める奴隷と化していきます。

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闇の左手 (アーシュラ・クローバー・ル=グィン著:ハヤカワ文庫SF)

 ル=グィンのSF小説中で、「所有せざる人々」と共に最も有名な作品ですが、実は私にとって今回が初読みでした。正直な処、彼女の社会科学系SFはやや苦手としていて、「所有せざる人々」の方は途中まで読んで挫折した記憶があります。今回読んだ感想も、なるほど名作ではあるが読んでいると何だか一々ごつごつと引っかかる感じがして、読み通すのにそれなりの努力が必要な作品というものでした。作品の感想を検索してみると、絶賛しているレヴューの一方で同様に感じている読者もそれなりに居るようです。なお、作品にいささかおどろおどろしいイメージすら与えているタイトルは、作中後半で主人公の一人であるエストラーベンが口にしたトルメルの歌の一節「光は暗闇の左手 暗闇は光の右手。二つはひとつ、・・・」からの引用であり、光と闇とは対立するものではなく表裏一体、さらには一身同体のものである事を表しています。
 古代ハインの遺伝子操作によって作られた両性具有人類の世界である惑星ゲセン(通称「冬」)に、エクーメンへの加入を即す使者として訪れた地球人男性の主人公ゲンリー・アイと、彼が最初に訪れた一方の大国カルハイド王国の宰相エストラーベンの二人が、共にこの作品の主人公です。前半ではエトラーベンの不可解にも思える言動に不信感を募らせてカルハイドを去ったゲンリー・アイは、次に訪れたもう一方の大国オルゴレインで収容所に送り込まれ死にかけていたときに、故国を追われて亡命していたエストラーベンに救われ、二人で氷原を超えて決死のカルハイド行きを試みます。その過程でアイはようやくエストラーベンの心の内を理解できるようになるのですが、これはまた、「性のあり方」という文化の最も基本となる部分が異なる者間の理解の困難さを象徴しているように思えます。さらに言えば、作中しばしば言及される「シフグレソル」という概念が結局理解できないままなのも、この理解の困難性を示しており、それがまたこの作品の読み難さの原因になっているように思います。以下のレビューにある、「理解」という概念がある種『「上の立場にあることから生じる余裕」という余剰物によってもたらされる、どこか「上から目線の寄与」としての相手に対する押しつけ』といったニュアンスを孕んでいる、という記述が、私の感じた事にかなり近いようです。口の中の腐れ茸:アーシュラ・K・ル=グウィン「闇の左手」を読んで

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黙示録3174年 (ウォルター・ミラー著:創元推理文庫SF)

 これもまた、ずっと以前から名前は知っていたポストアポカリプス系SFですが、今回が初読みとなりました。著者のWalter Michael Miller Jr.(1923--1996)はフロリダ州出身のドイツ系アメリカ人であり、作家としての活動は1950年代に集中しています。
 1970年代に起こった全面核戦争とその後の焚書坑儒によってほぼ文明が失われた世界において、後の世代への遺産として科学技術文献を保存し続けたリーボウィッツ修道院を中心に据え、6世紀ずつを置いた三つの時代の出来事を綴ったこの作品は、著者がアメリカでは少数派であるカソリック教徒である事を反映して、カソリックの教義に関するさまざまな用語がちりばめられています。原題の"A Canticle for Leibowitz"自体もそうで、直訳すれば「リーボウィッツ賛歌」とでもすべきでしょうか。現在の視点から見ると教会用語の日本語訳がやや不適切な部分もあり、例えば「上人」というのは「福者」と訳すべきでしょう。なお、著者の生前に発表された長編作品はこの一作のみですが、この作品の第二部のおよそ80年後の時代を舞台にした遺作"Saint Leibowitz and the Wild Horse Woman"が、1997年に出版されています。
文明水準が中世以前にまで退行していた時代(26世紀)の第一部におけるリーボウィッツの遺品発見と列聖の経緯では、すでに彼が命を懸けて保存した文献の記述内容自体は誰にも理解できないながら、それでも彼の偉業そのものは教会関係者には十分理解されている事が伺えます。第二部(32世紀)ではルネッサンスが始まると共にテクサカーナ王国による北アメリカ大陸統合が始まり、第三部(38世紀)には再び二大国家の冷戦の末に全面核戦争が起こって、20世紀の核戦争よりも徹底的な破滅を迎えるというこの作品での歴史は、過去から学ばずに同じ過ちを繰り返す人類の愚かさを憐れんでいるかのようです。おそらく地球上の人類が全滅したと思われる結末において、それをあからさまには描かない抑えた描写は却って強く印象に残ります。

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