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第6の大絶滅は起こるのか (ピーター・ブラネン著:築地書館)

 地球で原始的な生命が誕生したのは40億年前程度と推測されていますが、大型の多細胞生物が地球全域に広がったのは5憶7900万年前のエディアカラ紀以降とされています。その後の地球上生命の歴史は決して平坦なものではなく、地球上の大部分の生命が死に絶えた「大絶滅」と呼ばれる現象が少なくとも5回起こっています。古い順に並べると、オルドビス紀末(4億4500万年前)、デボン紀後期(3億7400万年前及び3億5900万年前)、ペルム紀末(2億5200万年前)、三畳紀末(2億100万年前)、そして白亜紀末(6600万年前)であり、最後の大絶滅は有名な恐竜が滅びたものです。
 タイトルの意味は、現生人類の登場から始まる現在進行中の多くの種の絶滅現象が、これらの大絶滅に匹敵するものになりうるかという問いであり、その答えは「現時点では明確にノー、しかしここのまま手をこまねいていると将来的にはあるいはイエス」というものです。史上最大の大絶滅であるペルム紀末絶滅ではその時点で生存していた97%以上の種が絶滅したとされていますが、他の大絶滅でもそれに匹敵する規模の割合で種の絶滅が起こっており、現在人類によって起こされている絶滅の規模とは比較になりません。しかしながら、過去の大全滅においては、さまざまな理由によって起こった空気中の炭酸ガス濃度の急上昇が、気温の急激な上昇を引き起こしており、有効な手を打たなければ今世紀末以降には過去の事例とかなり近いレベルの温室効果ガス濃度急上昇が起こりうるとされています。この本の主題はこの問題に対する警鐘であり、なるべく早く非常に厳しいレベルの温室効果ガス削減が必要であると主張しています。

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創造された「故郷」 -- ケーニヒスベルクからカリーニングラードへ (ユーリー・コスチャショーフ著:岩波書店)

 ヨーロッパ北部のバルト海沿岸の地図を眺めていると、リトアニアとポーランドの間にカリーニングラード州というロシアの飛び地がある事に気が付きます。ここは嘗ては東プロイセンと呼ばれていた地域の北半分であり、第二次大戦の結果としてドイツ領からソビエト連邦のロシア共和国に併合されました。その時点では連邦の構成共和国単位ではリトアニア共和国によって本土と分断された飛び地だったものの、実質は同じソビエト連邦であり飛び地感はなかったのですが、ソビエト連邦崩壊後には再び真の飛び地となったものです。この本は、カリーニングラード州の東プロイセン時代から現在までの歴史及びその新旧の住民たちについて書かれた一般向け専門書です。なお、カリーニングラード州の州都もまたカリーニングラード市であり、副題にあるケーニヒスベルクは、この街のドイツ時代の名称です。
 そもそも驚いたのが、ソ連の政治家であるカリーニンとこの都市とは実は縁もゆかりもなかった点です。生地であるとか亡命時代にここでカリーニンが活動していたとかいう由来があるのかと思いきや、新たにソ連領となったこの街の名をケーニヒベルクから変更する議論の最中に偶々カリーニンが死亡したために彼の名が付けられたのが真相でした。

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エドガルド・モルターラ誘拐事件 -- 少年の数奇な運命とイタリア統一 (デヴィッド・I・カーツァー著:早川書房)

 題名から想像するような推理小説ではなく、副題から解るように19世紀のイタリア統一に大きく影響を与えながらその後忘れ去られたある事件に関する歴史ノンフィクションです。キリスト教徒の召使によって両親に内緒で洗礼をされたユダヤ人の子供が、それを知った教会によって強制的に親元から引き離されキリスト教徒として育てられる、という現代の感覚では考えられない事例は、19世紀のローマ教皇領で何度も起こっており、ボローニャに住む9歳のエドガルド少年の事件もその一つでした。しかしこの事件が起こった1858年は、ローマ教皇の権威が失われオーストリアやフランスなどの周辺大国の軍隊によってその領土をようやく保っている時期だったため、両親を始めとするユダヤ社会による訴えにそれまでになく国内外での世論が沸騰して、それをきっかけとして歴史はサルディーニャ王国による教皇領の併合と最終的なイタリア統一へと進んでいきます。しかし一方で、教皇ピウス9世自らによりカソリック教育を受けたエドガルド少年自身はついに親元には戻らず、成人後はヨーロッパ中で布教を行う神父として活動しています。
 実はこの事件について私はこの本を読むまで全く聞いたことがなく、さらに読後にイタリア統一に関してネットで調べてみても全く記載がありませんでした。当時は国際世論を大いに騒がせたこの事件ですが、あとがきによると現在ではイタリア史においてもほぼ忘れ去られているようです。カソリック教会が自らの黒歴史であるこの事件を可能な限り忘却させたいのは当然として、ユダヤ教徒側でもほぼ忘却された理由に関しては、「エドガルド少年がユダヤ教と家族を捨てカソリックを受け入れた事が、ユダヤ教のキリスト教に対する敗北で民族の恥とみなされた」という著者のあとがきによる考察が的を射ているように思います。

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サルは大西洋を渡った -- 奇跡的な航海が生んだ進化史 (アラン・デケイロス著:みずず書房)

 ダーウインの逸話に登場するガラパゴス諸島のそれぞれの島での固有種進化がその例であるように、比較的相互の距離が近い陸地間では元々の生物種が別々の陸地に拡散し、お互いに個別に進化してやがて別々の種が生まれるというシナリオは、進化論が定説になって以降は普通に受け入れられてきました。特に問題となる生物種が長距離飛行可能な鳥などの場合は、お互いの距離がかなり離れていても移住が可能であり、その結果かなり離れた場所で同じ祖先種から進化した別種が進化する事も十分にあり得ると考えられます。一方で、空を飛んだり長距離を泳げない陸上動物はそれとは異なり、距離が近い島はともかく数百km離れた島には人為的手段を除けばたどり着く事が出来ないと考えられてきました。常識的に考えても、自分で船を造る事のできない人間以外の陸上動物が海を渡るには自力で泳ぎ切るか浮遊物に乗って偶然たどり着くしかなく、ある程度以上の餌や水が必要なサイズの陸上動物が長距離航海するのはほとんどあり得ないと考えられます。しかしながら「ほとんどあり得ない」というのは地質年代レベルの時間単位で考えたときには必ずしも真実ではなく、実際に過去にはそれが何度も起こっていたというのが、今回紹介する本の主張です。

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プーチンの国 -- ある地方都市に暮らす人々の記録 (アン・ギャレルズ著:原書房)

 1990年のソ連崩壊後に民主化へと向かうかと思われたロシアは、2000年のプーチン大統領就任以降再び抑圧的な権威主義に覆われ、政治面ではソ連時代に戻ったかのような状態が続いています。クリミア半島併合やウクライナ紛争への事実上の軍事介入などに対する欧米諸国の度重なる制裁による経済状況の悪化によって「今度こそプーチン支配は揺らぐのでは」という希望的観測とは裏腹に、ロシア国内でのプーチン支持率はむしろ上昇して国内政治基盤が盤石となっているのはなぜなのかを、ロシアの地方都市チェリアビンスクに住む人々の暮らしから探った本です。著者のアン・ギャレルズは嘗てTVネットワークABCのモスクワ支局長を務めたジャーナリストで、1982年に「ペルソナノングラータ」としてソ連を強制出国させられた経験がありますが、ソ連崩壊後の1993年からモスクワとは異なる真のロシアを代表する地方都市として無作為に選んだチェリアビンスクを2015年まで定期的に訪問してこの本を書きあげています。
 無茶苦茶な言動を繰り返し国内外に混乱をもたらしている米トランプ大統領が、政権発足から一年経っても公約をほぼ実行できていないのにも関わらずなぜその支持率がほとんど下がらないのかを、彼の支持基盤であるラストベルトに入り実際の支持者から取材調査した書籍や記事は日本でもいくつか見られますが、それ以上に盤石の支持率を誇る露プーチン大統領が、どのような理屈で支持されているのかを解説している本はあまりなく、その点で非常に貴重な内容です。

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