遂に役目を終えそうなキログラム原器

 数日前に報道されたニュースとなりますが、日本の技術総合研究所による「エックス線決勝密度法」によるプランク定数の精密測定によって、これまで国際キログラム原器によって定義されていた質量の単位の定義が改められ、キログラム原器はその役目を終える可能性が出てきました。フランス革命直後の18世紀末に決められたメートル法およびその拡張であるMKSA単位系、さらにはSI単位系において、単位の定義として最後まで原器の形が残っていたのが質量単位の定義でしたが、今回の成果によって十分正確に定められたプランク定数から質量単位が定義される事になれば、ついにすべての物理単位の定義において原器の役割がなくなる事になります。

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東ロボ君と人工無脳

 人工知能として東大入試の突破を目指していた「東ロボ君」ですが、昨年の段階で私立大学の8割には合格できるレベルにまで到達したものの今年の成績はむしろ伸び悩み、東大合格という当初の目的は達成できないと結論されて計画終了となりました。実は、東ロボ君が試験に回答している方法を見てみると、その実態は通常考えられている「人工知能」とは遠く、むしろ「人工無脳」に近いもののように私には思われます。

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重力波の初検出に関して:電磁波と重力波との相違点

 アインシュタインの一般相対性理論によってその存在を予言されていた重力波は、連星パルサーの公転周期の変化によって間接的には存在が示されていましたが、直接観測は極めて困難だろうとされてきました。しかしながら、近年の観測技術の進歩は目覚ましく、ついにアメリカの観測チームが重力波の検出に成功したというニュースが大きく報道されています。常識的には観測不可能と思われるほどの微小な長さの変化が測定可能となっている現在の技術進歩に改めて驚かされました。
 重力波は質量による時空そのものの歪みが波として伝わるものであり、大質量天体の回転や振動がその発生源となります。これは電磁波の発生機構と同様の原理であり、そこまでは今回の科学報道でも大抵触れられているのですが、実は電磁波と重力波との発生機構には大きな違いが一つあります。それは質量には負の値が存在せず、質量と慣性とが等価であるという理由に基づくものです。電磁波を発するのは正と負の電荷の対(双極子)の回転や振動ですが、大質量天体の対の場合両方の質量が正であり、振動や回転をしてもその重心の位置はまったく変わりません。そのため双極子モーメントは変化せず、この分の重力波発生への寄与は存在しません。実際には両方の天体の距離が0でないため、その間に働く重力も伝わるのに非常に短いが有限の時間がかかり、その遅れによって四重極モーメントが変化して、これによって重力波が発生する事になります。これが重力そのものの弱さと相まって、巨大質量天体であってもそれが発生する重力波が微小であり、観測が困難である事につながっています。また電磁波と異なり重力波が四重極波動である点は、重力を量子化した重力子の性質にも、そのスピンが2であるという形で表れています。

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大学入試の偏差値法に関するネット上の俗説と現実

 多くの私立大学の入学試験では受験生が受ける科目を選べる選択科目が存在し、英語などの必修科目と合わせて合否が判定されています。当然の事ながら、選択科目によって問題の難易度に差があるため(そもそも科目も受験生の母集団も異なるので、本当は難易度の比較のしようがない)、試験の素点をそのまま合計するのではなく、何らかの得点調整が必要になります。その調整方法として上智大学を筆頭とする多くの私立大学で用いられているのが「偏差値法」です。しかしながら、これに関してネットで検索して出てくる情報を見る限り、受験生だけではなく高校教師や予備校講師などの受験指導する立場の人さえもが、偏差値法について正しく理解しておらず、誤解に基づく怪説が流布されているようです。
 「偏差値法」は基本的に、各科目の全受験者の素点から平均点と標準偏差を計算し、それによって求まる各受験者の偏差値を受験科目で合計して得られる数値を、その受験者の得点とみなす方法です。もちろん、受験科目によって満点が異なる場合は、その分の重みを変えて合計します。例えば100点満点と150点満点の科目がある場合は、150点満点の科目の偏差値を1.5倍して加える事になります。また、大学によって偏差値の値をそのまま使うのか、あるいはそれを一次変換した値にするのかは差があるようですが、一次変換する場合は全科目に関して同じ変換をするため、受験者の換算点による順序はどちらで並べても同じになります。具体的な数式で書くと、
100点満点の試験でのある受験者の素点をXとし、その試験の平均点をM, 標準偏差をSとすると、その受験者の偏差値Zは
     Z=100+10(X-M)/S
と計算されます。例えば平均点が65点で標準偏差が15点の試験で80点を取った受験生の偏差値は、
     Z=50+10*(80-65)/15=50+10=60
となります。そして例えば英語が150点満点で国語と世界史が100点満点の場合、英語の偏差値が60, 国語の偏差値が55で世界史の偏差値が65なら、最終的な換算点は
     60*1.5+55+65=90+55+65=210点
と計算されます。
大学によっては、上の式の係数10を少し変えて、例えば
     Z=50+20(X-S)/50
と換算している場合もあります。この場合も、すべての科目で係数を一斉に10から20に変えているので、換算点の値は変わっても受験者の順番は偏差値をそのまま使った場合と完全に一致しています。

各科目ごとの標準偏差は、その科目の全受験者の粗点分布によって変わってきますが、通常の一山分布をしているなら、100点満点で20点程度と考えられます。ここで重要なのは、平均点だけではなく標準偏差の大小によって平均点から離れている素点の換算点が変わってくる事です。

さて、ネット上でよく見られる謎の主張は、「偏差値法の結果、各科目をむらなく得点する受験者の方が、得意不得意がある受験者より有利になる」というものです。これはよほど極端な状況を除いてほぼあり得ず、特に有利不利はありません。有利不利が出るのは、例えば平均点が50点よりかなり高く、しかも得意科目では100点だが不得意科目では0点といったほぼありえない状況です。この場合でも、逆に平均点が50点より低ければ、むしろ得意不得意があった方が有利に働きます。現実的に得意不得意科目がある受験者とない受験者で差が出るとしたら、自分の得意科目の標準偏差と不得意科目の標準偏差とが大きく異なる場合のみでしょう。

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燃料電池車は本当に究極のエコカーなのか?

 かなり以前からクリーンエネルギー自動車の本命と言われ続けてきた燃料電池車ですが、ついにトヨタ自動車のMIRAIの発売が開始され、本格的な「水素エネルギー社会」の幕開けと報道されています。尤も今すぐに購入予約をしても実際にMIRAIが納車されるのは数年度という話なので、実際に燃料電池車がある程度出回るのは相当に先の話になりそうです。また、燃料の水素を供給するステーション網が現時点ではほぼ存在せず、整備費用がペイするためには燃料電池車の普及が必要という所謂「鶏と卵」の関係にあるため、市販が先行する電気自動車とどちらが主流になるのか、正直言って疑問な点もあります。しかしここで書きたいのは別の論点です。

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