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最初にして最後の人類 (オラフ・ステープルドン著:国書刊行会)

 昨年読んだ本の中で、印象に残っているものの一つです。
 オラフ・ステープルドンのSF作品のうち「シリウス」、「オッドジョン」はずっと以前に翻訳がハヤカワ文庫から出ており、当時からこの作家については興味を持っていました。その後、ハードカバーで刊行された「スターメーカー」の翻訳も読み、残る「最初にして最後の人類」を心待ちにしていたので、図書館に配架されると直ぐに借り出しました。このタイトルの翻訳は、やや誤解を招くと思われます。「最初の人類と最後の人類」の方が直訳に近いでしょうが、結局同じ遺伝子を受け継ぐ人類、という点が最後に強調されているので実際の邦題も誤訳とは言えないと思います。
 さてこの作品では「最初の人類」である現代人類の数十億年に渡る進化と変異の歴史が淡々と語られて行きます。興味深いのは、この歴史の中では単純に現代人類の文明が進歩して行くのではなく、途中で衰退、再興を繰り返し、さらには遺伝的にも異なる「別の人類」へと次々と進化して行く事です。しかも良くあるように人類が滅びてネズミやゴキブリなどの別の生物が取って代わるのではなく、あくまで現世人類の直系子孫が延々と続いて行きます。ある種が世代交代して別の人類種に変わる際には、例えばごく僅か(3名!)の生存者を残して人類がほぼ絶滅し、そこから再び新たな別の人類が生まれて行くという過程を辿ります。これはごく少数のグループ内での遺伝子変異が偶然に固定されて種の進化が起こるという現代生物学での進化理論にも合致しています。また、侵略してきた火星人の遺伝子を取り込んだり、人為的に遺伝子操作されて新たな世代の人類が作られたり、この辺りを見ていると、ステープルドンは当時の生物進化理論を超越していたのではとすら感じられます。さらに月の落下という事態に直面した人類は、地球からテラフォーミングされた金星に移住し、そこでも環境に合わせて姿を変えてゆきます。さらにその後、太陽の膨張によって内惑星は失われ、人類は海王星に移住して最後の種(確か17番目の人類)へと進化して行きます。しかし人類は数十億年かかってもついに太陽系から出る事は出来ず、最後には異常に光度を増した太陽の放つ放射線によって人類は遂に絶滅へと追い込まれてゆきます。
 この小説の構成は、その最後の人類の一人が、時を越えてはるか昔の最初の人類に語りかける形になっています。人類進化に関する部分が時代を超えているのに対して、宇宙への進出の方はつりあいが取れないほどに限定的で、滅びる寸前の最後の人類たちは「生命の種子」を載せた探査機を太陽系外に送り出すものの、自らは成す術もなく滅びて行きます。「スターメーカー」ではさまざまな異星人たちの世界を描いていますからステープルドンは太陽系がごくまれな存在だと考えていたとは思えず、この点はちょっと不思議な気がします。特に一部の人類種は寿命が1万年を超えていたので、亜光速の宇宙船でも十分に別の恒星系に到達できるのではと考えてしまいます。その点を始め他にも時代に縛られた限界が見られるものの、私はこの作品は現在SFとしても耐える内容だと思います。

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