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考古学崩壊 -- 前期旧石器捏造事件の深層 (竹岡 俊樹 著:勉誠出版)

  2000年11月に明らかになった「前期旧石器時代」の石器捏造事件の告発者が、事件によって壊滅的打撃を受けた日本の考古学界がどのように反省し何を学んだか、というより事件から14年間の間何も反省せず何も学ばなかった事を糾弾している著作です。ここで告発されている内容が真実なら、日本の考古学は学問ではない、少なくともまともな学問とは言えないでしょう。
 考古学会による事件の検証は「自分たちは非常に巧妙な手口の詐欺によって騙された被害者である」という主張に終始しているのですが、一方でその捏造を行った「詐欺師」である藤村新一氏自体は考古学の基本的な知識も持たない無知で純朴なアマチュアであったとも強調しています。常識的に考えてもこの両方の主張はつじつまが合わず非常な無理を感じるわけで、そのため一部では別に捏造の黒幕が居て、藤村氏は黒幕に言われるままに動いた操り人形であるという陰謀説が唱えられるほどでした。実際には、在野のアマチュアである藤村氏は学会の権威たちと同等の知識を持っており、だからこそ彼らを騙すためのポイントをしっかり抑える事ができたというのが著者の主張であり、学会の検証結果に比べてはるかに説得力があります。そう考えれば、自分たちの目が本物の石器と偽物とを見分ける事の出来ない節穴であり、自分たちのレベルは在野のアマチュアと同等であるという非常に不都合な事実を認めたくないが故の責任逃れの結果、学会の検証はあのような内容になったという事になります。 藤村氏が偽造を行ったのも、「学会で崇められている権威者たちは実際には石器について何も知らない無能ぞろいで、在野の自分の方がはるかに石器に関する知識があるのに、学歴がないために馬鹿にされているのは我慢できない」という鬱屈した感情から来た一種の復讐であったと考えれば納得がいきます。

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