ぼくがきみを殺すまで (あさのあつこ 著:朝日新聞夕刊連載)

 掲載を終えたばかりの新聞連載小説です。朝刊に比べて夕刊の連載小説は短いものが多いのですが、この小説は全部で95回という夕刊連載としても異例の短さでした。嘗て共存していた二つの民族が互いに憎しみを募らせて戦争となり、戦場で捕虜となった少年兵の一人が処刑前夜に過去を回想する、という形のこの小説は、一見すると中東の状況を題材としているようで、実は日本の近未来の最悪形を描いていると考えられます。それは特に、主人公の兄が教師をしていた両民族共存の学校が閉鎖される経緯が、「政治的中立性」の名の下に、政府の方針に反する言動を教育現場から排除する現在の流れと重なって見えるからです。恐らく、最近の日本とその周辺国との状況にかなりの危機感を持って、著者はこの小説を書いたのでしょうし、私もそのように感じて重苦しい気持ちで読み進めていました。
 最終回直前になっても一体どの様にして結末を迎えるのかが私には予想できず、かなりやきもきして毎日読んでいました。ある意味で未完の様な形でぶっつりと終わった訳ですが、確かに他に終わり様がないとも思えます。題名が内容と合っていないとも感じられましたが、私自身は以下の様に題名を解釈しました。

 その意思を貫くのは困難だったとは言え、現実に流されて少年兵となり戦場に立った主人公は敵の少年兵たちを殺し、さらには味方の少年兵たちも死地に追いやった。主人公だけでなく他の兵士、さらには一般市民も同様であり、嘗ては友人同士だった一方の民族(ぼく)がもう一方の民族(きみ)を敵と見なして殺す事になるのは、ある一線を越えてしまえば本当に簡単であった。

 もちろん、読者の数だけの解釈が可能でしょうが、いかがでしょうか?

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