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生命の星の条件を探る (阿部 豊 著:文藝春秋)

 1995年のPeg51を巡る太陽系外惑星の発見以降、多くの系外惑星が観測されるようになり、その大きさも木星あるいはそれを上回る質量の巨大惑星から海王星レベル、そして最近は地球と同程度の惑星までが次々と発見されるようになりました。当然の事として、そのような系外惑星に生命が存在するか、少なくとも生命が存在し得るかという疑問が、現実的な科学的問題となってきています。ここで取り上げたのは、最近の系外惑星観測や惑星系形成理論の進歩を取り込んで生命を育める惑星の条件を考察した、非常に面白い本です。
 「惑星表面に液体の水が永続的に存在し得る」という条件自体は、恒星周囲のハビタブルゾーンとしてよく知られた基本的な話ですが、この本によればさらに、単に海が存在すればよいのではなく生命現象を支える元素であるリンの供給場所として大陸が必要であり、そのためにはむしろ水の量は少ない方が良い、と結論されており、これはかなり意外でした。指摘されてみると確かに、地球全体に占める水の割合は極めて少ないのにその表面は7割が海に覆われている訳で、惑星の構成物質に含まれる水の量の少しの差で海惑星になるか陸惑星になるかが変わってくる事になります。また惑星の大きさも、大気を保持できるために下限が必要なだけでなく、スーパーアースもあまり良くないと述べられており、その論拠もなるほどと感じました。大きな地球型惑星はそれだけ表面重力が大きく、さらに内部の熱が逃げにくいため地殻の岩石が柔らかい、そのため地形の凹凸が小型惑星より小さくなって一面の海惑星になりやすいという理屈です。
 もちろんこの本での議論はすべて、地球上の生物とある程度似た生物の発生と進化を前提としており、それと大きく異なる生命については考慮されていません。しかし例えば非炭素系生物や、水以外の液体に依存する生命に関しては、少なくとも現時点では科学ではなく純粋SFでしか議論できない状況なので、仕方ないでしょう。

テーマ:本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

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