オレンジ党、最後の歌 (天沢退二郎 著:復刊ドットコム)
オレンジ党シリーズの最終巻で、三部作が書かれた1980年代からかなり時代を経た2011年に出版されています。この「一旦は完結していると思われていた三部作に、ずっと後に四作目が書かれる」というのは、ル=グィンの「アースシー三部作」と全く同じ経緯で、偶然とは思えない何かを感じます。そしてまた、東日本大震災とそれによる原発事故の影響が明らかにみられるこの作品は、かなり癖があるオレンジ党シリーズの中でも最も政治的主張が強く感じられる「問題作」であり、読者によって好き嫌いが相当に分かれるのではないでしょうか。少なくともはっきりと見えるのは、ここ十年程度の間に特に顕著になってきた日本における一連の政治的・社会的状況に対する著者の強い危機感です。
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