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タウ・ゼロ (ポール・アンダースン著:創元SF文庫)

 ポール・アンダースンの代表作とされる有名作品ですが、私はずっと昔に途中まで読んで挫折した記憶があります。恐らくちょうど私自身がSFに興味をなくしかけていた頃だった上に、中盤の陰鬱な展開に耐えられずに投げ出したのだと思いますが、今回改めて読んでみると、単に壮大なハードSFというだけでなく閉塞状況の中での人間心理描写も優れていて、さすがこの時代の第一人者の作品だと感心しました。
 スペースオペラ系では普通に使われている超光速を封印し、あくまで現実に即した亜光速での恒星間飛行という限界を保持しながら、銀河系を飛び出し宇宙そのものをもある意味で飛び出すという正にぶっ飛んだ展開の一方で、作品のもう一つのテーマは閉鎖された宇宙船内での濃密な人間模様と葛藤という、かなり変わった作品です。作品の舞台となる宇宙船「レオノーラ・クリスティーネ号」は、世代型を除く恒星間宇宙船として唯一原理的に可能とされていたバザード・ラムジェット推進であり、燃料切れの心配なしに無限に加速可能です。この設定を逆手にとって「もし止めることができなくなって、本当に無限に加速し続けたらどうなるのか」というアイディアと、当時の最先端宇宙論とを組み合わせた結果、終盤までの重苦しい展開から一転して明るい未来が開けていきます。
 ただし、宇宙膨張が止まって収縮に転じ、さらに跳ね返って新しい膨張宇宙が生まれる、という設定自体は当時の宇宙論的にはあり得るのですが、宇宙の構成物質だけでなく空間そのものが膨張・収縮しているため、宇宙船はどころかどんな物質もビッグクランチを通過して次の世代の宇宙に行く事は不可能です。その点は作者が宇宙論を誤解していたようにも思えます。

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