光より速いニュートリノの観測

 びっくりするような記事が、一般のニュースサイトで報じられました。
光より速いニュートリノ 国際研究で観測 相対論と矛盾
思わず今日の日付が4月1日ではない事を確認してしまうような内容ですが、asahi.comだけでなく他の新聞サイトでも報じられているので、少なくともこの観測が発表されたのは事実のようです。
 もしこの実験結果が正しいのなら、現代科学に計り知れないほど大きな衝撃を与える事になります。直接的には特殊相対論の根底が覆され、それに乗っている一般相対論も否定される事になるでしょう。しかし相対論はそれだけを否定して済ませられるような理論ではありません。これまで相対論によって数多くの科学的予想がなされ、実際にその現象が確認される事により、理論の正しさが裏付けられてきました。また、相対論が正しい事を前提として現代科学は展開されており、実は日常的な技術にも応用されています。今回の実験結果が正しいならば、量子力学と並ぶ現代物理学の基礎理論である特殊相対論に大きな修正が必要となりますが、その最も根底に関わる仮定だけに、そのような修正が可能なのか疑わしいところです。
 これまでの科学的常識に完全に反する結果を一般に発表した以上、実験グループには相当の確信があるのだと思いますが、まさか「二点間の距離の測り間違い」等の初歩的ミスではないだろうな・・・。どのみちトンデモ系の人々は、鬼の首を取ったようにこれに関するトンデモ理論を書きまくるでしょうね。

追記:一日経ってからの追加の報道内容を見ていると、やはり二点間の距離を決めているのがGPS衛星頼りという事で、この辺りの誤差の可能性が一番高いのではという気がします。もちろん実験者自身もそんな事は解っているでしょうから、色々と確認はしているのでしょうが。
 もう一つ、これは恐らく距離測定の誤差だろうと考える根拠は、得られたニュートリノの速度が真空中の光速度c=2.99792458*10^8m/sに「近すぎる」点です。単にcを超える速度というだけならこれだけcに近い値になるのは不自然で、特に「虚数質量を持つためcより速く走る」のなら、むしろ幾らでも大きな速度になりそうなものです。そうではなく、cに極めて近い観測値という事は、cよりわずかに小さい数値に誤差が生じたため、というのが一番自然な説明です。cの値そのものは最も基礎的な物理定数であり、これまでさまざまな実験で再三測定されていますから、こんな値の誤差が存在するはずはなく、となると距離の測り間違いが一番ありそうな気がします。CERNからグランサッソまでの距離およそ730kmが実際には0.0025%すなわち1.8m程度短ければ矛盾が解消される訳ですが、これって結構微妙な値ですね。現在のGPSの精度を出すには、GPS衛星の軌道運動による時間の遅れ(これは特殊相対論的効果)だけでなく、地上と人工衛星との重力ポテンシャルの差による時間のずれ(こちらは一般相対論的効果)まで計算に入れる必要があるとう話を読んだ事があるのですが、そうなると例えばニュートリノが飛ぶ軌道の中間部分は両端よりも地球の内側にあるため、重力ポテンシャルがわずかに異なる筈で、その分の補正等も必要なはずです。この補正がどの程度の大きさなのか、はるかに小さくて無視できる量なのかもしれませんが、他にも色々な補正が必要そうで、案外合計すると馬鹿にならないのかもしれません。
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