収容所惑星 (A&B ストルガツキー:早川書房)

しばらく前に紹介した「神様はつらい」と同じくNoon Universe世界での作品で、1972年に発表されています。日本での初版は1978年となっており、私が始めて読んだのも80年代初めだと思いますが、今回数十年振りに読み直したら細かい部分だけでなく粗筋レベルで、子供の頃の記憶とはかなり違っていました。
 今回読んで気が付いたのですが、構成と章立てが同じ作者の「滅びの都市」に非常に似ています。どちらも主人公が状況が良く解らないまま理不尽な世界に投げ込まれ、その世界での立場を次々に変えながら矛盾に立ち向かい、真実に近づこうとするが最後にどんでん返しがあるという構成で、主人公の立場の遍歴がそのまま章のタイトルになっています。矛盾に立ち向かう積極性にはかなりの差が感じられるものの、結果的にどちらも解決に失敗し続ける点も同じです。
 この小説に関する何人かの方の記事を読むと、非常に重苦しくて中々再読する気になれないという感想が目に付きます。それは恐らく、単に主人公マクシムの戦いが徒労に終わっただけでなく、「遍歴者」らによる地球からの介入の方向性が理解しがたい、あるいは認めたくない点によるものだと思います。紅蓮創造者集団によるクーデターに初めから加わっていたのではなく、クーデター後に政権に入り込んで権力を乗っ取ったようなのですが、現時点での電波による国民の洗脳と徹底的な圧政という状況は、地球側も容認していると思われ、感情的に到底納得できないのも当然です。恐らく無政府状態による飢餓と貧困よりは、強力な政府による管理国家の方がましと割り切った結果であり、「遍歴者」たちの長期計画ではこの後徐々に民主化が進んでいくのでしょうが、それでも到底正当化されるとは思えません。ストルガツキーも決してこの計画を正当化していないのですが、この辺りは西側とははっきり異なる、歴史的に抑圧体制しか経験していない民族の達観のようなものを感じます。
 それにしても、「滅びの都市」とそれほど変わらないソ連をイメージさせるディストピアを描いたこの作品が、当時のソ連でよくも検閲を掻い潜って出版できたと思います。本来は自分たちと同類である奇形人を弾圧している部分も含め、「紅蓮創造者集団」のモデルはソビエト共産党にしか見えないのですが、もしかすると「紅蓮」と訳されてる言葉の元のロシア語には、「赤い」というニュアンスは入っていないのでしょうか?
 ところで地球人であるマクシムは惑星サラクシでは半ば超人であり、それが独力で不正の打破に立ち上がるもののその結果は・・・、というのはアメコミのスーパーヒーローものに同様の話がありそうです。サブカルチャーではメジャーな文学に架せられる余計な制約がない分、より過激で深い考察がされる場合もあり、「遍歴者」らの計画の是非も含めて、例えばこのブログでも取り上げたジャスティスリーグの一話「より良き世界」など、この作品でのテーマと重なる部分があるようにも思います。
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