波が風を消す(A&B ストルガツキー:早川書房)

 マクシム・カンメラー三部作の第三話で、78年の「蟻塚の中のかぶと虫」から、前書きすなわちカンメラーが回想録を書いている時点が125年なので47年後、実際の物語が進行している時点が99年なので21年が経過しています。すでにシコルスキーは亡くなっており、その他に前二作に登場した何人かの人物のその後も語られます。「シャーマン」は恐らく「妖術使い」と同一人物でしょうね?本作では遍歴者たちが糸を引いているのではと思われる奇妙な事件の連鎖が描かれ、ついに彼らの正体が明かされるのではと思いきや、最後は肩透かしを食ったような結末となりました。
この話で新たに明らかになった設定が、フカミゼーションです。この時代の地球人のほとんど全員が出生前にこの処置を受けており、治癒能力や抵抗力を含む身体能力全般が非処置者よりもはるかに向上しています。どうやらこの処置が、「収容所惑星」におけるマクシムの現代人をはるかに凌駕した怪我からの回復能力の原因のようです。
 そのフカミゼーション恐怖症を始め、地球で起こった幾つかの奇妙な出来事が、偶然ではなく何者かの意図が働いているという展開は、現実社会では病的な陰謀史観になってしまいますが、SFとしてはありうる話です。その何者かが実は遍歴者ではなく、人類から新たに進化した「類人類」だったというのはかなり意表を突かれました。ただ、そもそも遍歴者が単一の種族なのかが不明なので、もしかすると類人類がさらに進化した先が遍歴者であるという可能性は残っています。
 前作で登場したタゴール人の他に、レオニード人というさらに古い文明が存在する事が書かれています。しかしこちらも詳細は一切不明で、30万年以上は経ている極端に古い文明で、「自然に統合されて停滞している」とだけ説明されています。一方タゴール人の方は、先見性が異常に発達しており、新技術がもたらす有害な結果を避けるために技術進歩を抑制している文明との事です。また、前話では地球に大使館を開設していたビッグヘッドたちはどうやらあの直後に地球から引き上げ、一切の交渉を絶っている様子です。
 ところで「蟻塚の中のかぶと虫」という比喩の方は説明を読んで理解できたのですが、本作でゴルボフスキーがつぶやいた「波が風を消す」の意味は、会議の他のメンバーだけでなく私にも理解できません。どなたか解説をお願いします。
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