シェイヨルという名の星 (コードウェイナー・スミス:ハヤカワ文庫)

 コードウェイナー・スミスの未来史「人類補完機構」シリーズは、ハヤカワ文庫SFで合計4冊が翻訳されており、「シェイヨルという名の星」はそのうちの一冊で4作の中短篇から成っています。解説によると、短編集「鼠と竜のゲーム」と併せてスミスのベスト短編集の全訳となり、人類補完機構の歴史では主に後半の出来事を扱っています。実は表題作自体はずっと以前にベストもの短編集で読んだ事があり、かなり印象に残っていました。また長編「ノーストリリア」はすでに読んでおり、動物から作られた下級民の存在についてはある程度知っていました。ただ、両方を読んでもまだ、下級民の実際の容姿が今一つ掴めません。元の動物が何かなのかは一目で解るようですが、例えばク・メルに猫耳や尻尾があるといった描写はなく、そうなると一見すると通常の人間と区別がつかないのでは。全体的な雰囲気がどう見ても猫や犬、という感じなのでしょうか?
まず「クラウンタウンの死婦人」は、補完機構世界において奴隷以下の扱いを受けてきた下級民の権利が認められるようになる切っ掛けとなった事件を扱っています。ド・ジョーンのと仲間たちの殉教自体は状況をほぼ変える事が出来ずに終わりますが、この事件を切っ掛けとして生まれた人物(の子孫)であるロード・ジェストコースト7世が、後に下級民の地位の向上を図っていく事になります。そして(恐らくジェストコーストの誕生を含めた)これら全ては、ずっと昔に死んだ後にコンピューターに人格が移されているレイディ・バング・アシャシュによって計画されたものでした。ド・ジョーンの処刑がジャンヌ・ダルクのそれに擬えられているのは明らかですが、正直なところ二つがどうつながるのか良く解りません。平民であるジャンヌ・ダルクの行いに対する人々の記憶が、ずっと後の世の貴族支配の崩壊の遠因となっているという解釈なのでしょうか?
 次の「老いた大地の底で」は、正直なところ良く理解できない話です。恐らく、補完機構の支配により人類は一切のトラブルに会う事が無くなった反面、あまりにも平穏で生きる目的を失ってしまっていたため、この事件を切っ掛けとして提起された「人類の再発見」政策によってそれが正されるようになったという事なのだと思います。
 「帰らぬク・メルのバラッド」は、「ノーストリリア」でも活躍した猫娘ク・メルとジェストコーストとの悲恋?というかなれ初めを描いた作品です。イ・テレケリも「ノーストリリア」に登場していますが、この作品ではあちらよりずっと超人的な人物に見えます。恐らく「ノーストリリア」の事件は、この数年後なのでしょう。
 最後の表題作の舞台シェイヨルは、他の作品でも言及される事のある惑星で、ここに送られた追放者たちは土着の微生物によって人体工場化され、半永遠に生き続けるという地獄世界です。そもそも補完機構世界では人間の寿命が数百年に延びている事もあり、登場人物からだけでは個々の作品の時代がつかみ難いのですが、シェイヨルの追放者たちは不老不死なためさらに解り難くなっています。ラストに登場する長官レイディ・ヨハンナ・グレーデが「帰らぬク・メルのバラッド」での同名の人物と同一なら、シェイヨルが役目を終えたのは「ノーストリリア」とほぼ同年代という事になります。一方、主人公やダー皇后を追放した帝国は「輝ける帝国」と同じものなのでしょうか?帝国がシェイヨルを積極的に利用していたのは間違いないのですが、スズタルを送ったのは補完機構なはずなので、ヨハンナの「知らなかった」という言い訳は通らないような気がします。
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