第81Q戦争(コードウェイナー・スミス:ハヤカワ文庫)

 人類補完機構シリーズの短編のうち、「鼠と竜のゲーム」「シェイヨルという名の星」に収録されなかったものに、シリーズ外の数作を合わせた短編集です。実は上の二つの短編集は 英語でのJ.J.ピアス編の短編集"The Best of Cordwainer Smith"を翻訳時に二分したものなので、この「第81Q戦争」に収録されている短編はそれに選ばれなかったものという事になります。その理由によるものか、正直言って今一つの作品が多いと感じました。以下幾つかの短編を取り挙げてみます。
 表題作はスミスが14歳で書いた処女作ですが、そういった歴史的な価値はあるものの、人類補完機構シリーズに入るのか微妙な作品です。J.J.ピアスの年表では最も初期に入ってますが、さらに以前の時代に並べられている「夢幻世界へ」と共に、シリーズから外した方が良いのでは。
 「マーク・エルフ」と「昼下がりの女王」はヴォマクト姉妹の登場が描かれる、補完機構世界の歴史という視点からは非常に重要な作品です。ただ、特に「昼下がりの女王」の方はあまりにメルヘンチックで、解説にもあるようにジヴァンツ団のイメージが描けないなど、話に深みが感じられません。恐らくこれは実際に書いたのがスミス本人ではなく、彼の遺稿を元に未亡人が完成させたのが理由の一つなのでしょう。この時点ですでに動物から作られた「動物人」が登場していますが、下級民よりははるかに元の動物の姿を残しているようです。なお表紙画の一見ユーモラスなマシンは「マークエルフ」に登場するメンシェンイェーガー(人類狩猟機)です。
 「人びとが降った日」は特に一時代前の中国からイメージする「人海戦術」をそのまま絵にしたような作品です。補完機構とチャイネシアはかなり長期にわたって共存していたようで、前話との関係からするとジヴァンツ団は中国共産党がイメージされているのかも。
 「大佐は無の極から帰った」を読んで、補完機構宇宙での超光速技術「平面航法」が実際に物体が平面化されているらしいと解りました。SFで良くある超光速航法は「四次元」等の次元が高くなる方向が普通なので、この平面航法のシステムがつかめないのですが、もしや三次元空間を二次元に射影して距離を詰めるといったアイディアなのでしょうか?
 「ガスタブルの惑星より」は一発ネタのユーモア作品です。どう見ても北京ダックですよね。
人類補完機構シリーズ以外の短編の大部分と「夢幻世界へ」は、所謂「冷戦もの」と呼ばれる作品です。書かれた当時はかなりはやったタイプでそれなりに臨場感があったのでしょうが、今読むとソ連の描写もずれていたりとあまりピンと来なくなっています。
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