文明崩壊 (ジャレド・ダイアモンド:草思社)

 恐らくこの種の硬い内容としてはかなり有名な本だと思います。私にとってこの著者の本を読むのは、「銃・病原菌・鉄」に続き二冊目で、特に興味を持ったのは、6-8章のヴァイキング特にそのグリーンランド植民地に関する部分と、13章の現代オーストラリアに関する部分でした。
 以前から北欧史特にヴァイキングの西方遠征に関してはかなり興味があったので、彼らがアイスランドを経由してグリーンランドさらには北米大陸にまで到達し、ニューファンドランド島やラブラドル半島に植民地を作ったものの北米植民地はすぐに放棄された事、一方グリーンランド植民地は相当の長期間存続したが、中世末の地球寒冷化のために滅びたという事実自体はこの本を読む前から知っていましたが、ここに書かれているような詳しい経緯は初めて知りました。最も驚いたのは、グリーンランドのヴァイキングたちが飢え死寸前になっても魚を食べようとしなかった点です。確かに彼らの元の主食は牛や豚などの家畜類の肉だったとは言え、スカンジナビアでも豊富な魚を食べていたのではないかと思うのですが、グリーンランドではなぜ頑なに食べなかったのか、かなりの謎です。著者が(根拠無く)想像しているように赤毛のレイフが腐った魚で死にかけて・・・とかいう事が本当にあったのかもしれませんね。
 もう一つ驚きだっったのが、アイスランド内陸の荒地が入植以降に生じたものだった事です。現在のアイスランド内陸の多くは、NASAが月面に見立てて訓練に利用するほどの草一本ないような荒地なのですが、入植前は草地が広がっていて、開墾の結果表土が失われた結果だったとは。これはオーストラリアにも通じますが、地力を超えた農耕や放牧によって緑に覆われていた土地がここまで簡単に草の無い荒地に変わるとは想像もしませんでした。
 そのオーストラリアに関して驚いたのが、この国の大規模農業や放牧の生産性が極めて低いうえに、持続可能でない収奪型産業だった点です。一般的な日本人の感覚からすると、広大な農地において低コストで行われる農業は生産性が高く、またオーストラリアは牛や羊の国というイメージがある訳ですが、それらが実際には風土に合っていない産業だったとは全く意外でした。そういえば近年オーストラリアの旱魃被害のの報道が頻繁に見られるようになりましたが、この本に書かれている事が事実なら、日本の食糧輸入先として今後も安心できる国ではないように思えてきます。
 最終16章で示された著者の解決策はありきたりですが、これは仕方ないでしょう。むしろこれだけ困難な問題に画期的な解決策があると思うのが間違いで、その種のうまい話は疑ってかかるべきです。まあ、私自身はもっと悲観的なのですが。
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