東欧SF傑作集 :上・下 (創元推理文庫)

 これも図書館で借りた本ですが、上下巻二冊共に折り込みの新刊案内が入ったままだったので、恐らくほとんど誰も借りていなかったのかなと思います。集録作品はポーランドが7編、ハンガリーが5編、ブルガリアが5編、チェコスロバキアが5編、ユーゴスラビアが1編、東ドイツが1編、ルーマニアが3編の合計27編ですが、カレル・チャペック以外は正直なところほぼ初めて聞くような作家のものでした。この種の「傑作集」は大抵、興味深いものとどこが傑作なのか解らないものが混在しているのですが、これもまたその例に漏れずでした。印象に残った幾つかの短編を紹介します。
 あちらの世界 (アダム・ヴィシニェフスキ=スネルグ:ポーランド)
かなり奇妙な雰囲気の短編で、途中までは何が何だか解りませんでした。あちらの世界と元々の世界との関係とか、そもそも両方の世界で何が起こっているのかがほぼ明らかにされないままなのは不満ですが、時間の流れが遅いと慣性や粘性が大きくなったように見えるのはその通りで、東欧のSFらしく科学的な部分が妙にきっちリしています。それにしても、テナの立場が良く解りません。主人公より前にあの世界を調査に行ったのか、それともあちらの世界の出身で破滅を生き残った証言者なのでしょうか?

 脳移植 (チェルナ・イョジェフ:ハンガリー)
粗野で残忍な独裁者と入れ替わった人物が実はまた独裁者気質だったという展開は、何となく初めから想像がつきましたが、終始緊迫した展開で中々面白く読めました。実際のところ私個人としては、「人間の人格等は全て脳にあり、脳を入れ変わった人物は肉体ではなく脳の人格を引き継ぐ」かどうかは疑問で、あくまでも脳と肉体をあわせて初めて人格が構成されていると思うので、たとえ脳の方が独裁者気質でなくても、段々と肉体の気質に影響されていく事があるのではないかと想像しています。

 マホメットの毛 (ジミトル・ペーエフ:ブルガリア)
タイトルから想像されるようなファンタジー系とは全く異なる、かなりハードSF系の短編でした。オーパーツが記録媒体で、それによって太古の断片的な記憶が蘇るというのはある意味斬新かもしれません。このオーパーツは「2001年宇宙の旅」の石版のような役割を果たしたのでしょうか?

 消失 (ミロスラフ・イサコーヴィッチ:ユーゴスラビア)
現世の抑圧体制からの「別の世界」への脱出という、エリアーデの一連の作品を連想させる短編です。ユーゴスラビアは、東欧諸国の中では最も開放的だった国ですが、やはり中に暮らしている作家にとっては息苦しい社会だっらのかもしれません。ただこの作品が国内で問題なく出版できた事自体が、ソ連や他の東欧諸国よりは自由な国であった証拠と言えるでしょう。

 アイクサよ永遠なれ (ホリア・アラーマ:ルーマニア)
下巻最後に集録されている中編で、ある意味レム流の「人類の想像のつかない未知」との遭遇が描かれています。考えてみると、到着後行方不明になった最初の探検隊の捜索に赴いた第二の探検隊が異常現象に遭遇するというのは、レムの「砂漠の惑星」と同じプロットですね。アイクサの謎の正体と何が起こっているか自体は中盤で想像がついたのですが、最後のどんでん返しにはかなり意表を突かれました。
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