オッド・ジョン (オラフ・ステープルドン著:ハヤカワ文庫SF)

オラフ・ステープルドンの四つの長編SFの一つで、日本ではジュブナイル版が出ている事もあり、四作の中では最も知られていると思われる作品です。同じくハヤカワ文庫から翻訳の出ている「シリウス」と共に、相当昔に一度読んでいたのですが、今回改めて図書館で借りて読み直しました。所謂「超人もの」に分類されるSFですが、後の多くの超人ものSFとはかなり異なり、いかにもステープルドンらしいと感じました。
 ホモ・サピエンスを超えた超人類「ホモ・シューピリア」である主人公ジョンの生涯を、誕生の経緯からその悲劇的な死まで描くという構成は「シリウス」と同様であり、事実上「個人」が描写されない残りの二作「最後にして最初の人類」、「スターメーカー」とは対照的です。一方で、通常の胎児の特徴を持つ彼ら超人類の姿をはじめとして、「最期のそして最初の人類」にも見られたような生物進化に関するかなり深い知識に裏付けられた描写が見られるのも特徴です。
 超人類と通常人類との対立が後半のテーマですが、その結果が両者の生存を掛けた闘争にはならず、島の超人類たちが自ら滅びの道を選ぶ点もこの作品の特異な点です。ただしジョンたち超人類は決して「絶対平和主義」ではなく、旅の途中で一旦は救助した遭難者や島の先住民などは、あたかも人間が他の動物たちを駆除するのと同様にして抹殺しています。彼らが最期に人類たちと生存を賭けた全面対決を避けて自ら滅んだのは、その戦いが共倒れの結果を招く事を予想したためのようです。考えてみると、実際にはチベットのランガッツェらのグループは通常人に知られないまま生き残っている訳で、彼らがジョンらの犠牲を生かして超人類の新たな未来を開いていく可能性は残っています。一方で、ヘブリディーズ諸島の「赤ん坊悪魔」や、適切に扱われないまま狂気に落ちてしまった超人類たちの存在は、強力な狂気の超人類がいずれ世界を破滅させてしまうかもしれないという暗い影を、この世界の未来に投げかけています。
 このように、同時代あるいはその後の多くのSF作品の中でも、ステープルドン作品は非常に特異な、本質的に異なる存在です。その特異さは正に、通常人の中のジョンたちのそれと同等のようにも思え、その意味ではステープルドンは「SF作家の中の超人類」なのかもしれません。
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