地獄から来た青年 (A&B ストルガツキイ著:群像社)

 この本を買ったのはかなり以前で、始めに読んだ時点では未だ、これがストルガツキイ兄弟のSF作品の共通世界である"Noon Space"ものの一部を成している事は知りませんでした。主人公ガークの惑星ギガンダは、Noon Spaceシリーズの中ではサラクシに次いでかなり詳しく描写されている異星で、文明段階は恐らく第一次大戦時のヨーロッパレベルと思われる、戦争に明け暮れる世界です。ただし実際の物語は、戦闘で瀕死の重傷を負ったガークが連れて来られた地球で展開し、戦争地獄ギガンダから来たガークが、ギガンダを初めとするより遅れた世界に密かに干渉を行う地球(あるいはコムコン)の様を眺める形で展開します。ガークの目を通してみる地球は、完全に平和で高度な科学力を持つものの活気を失った社会として描かれています。「神様はつらい」や「収容所惑星」では、(現在の欧米諸国が行っているような)かなりはっきりとした介入とコムコン型の密やかな介入とのどちらが社会の改善のために良いのかという点がテーマになっていますが、「地獄から来た青年」ではその論点よりもむしろ、介入を行う側の問題点に焦点が合っているように見えます。
 ギガンダにおいてガークの属しているアライ公国は、「蟻塚の中のかぶと虫」でも言及されており、確か公爵の狩猟官がコムコンの工作員となっていました。こちらではガークがギガンダに戻ってきた時点ではすでに公国は崩壊していたようなので、そうすると「蟻塚の中のかぶと虫」は「地獄から来た青年」よりも前の時点の出来事なのでしょうか。しかし風采の上がらないくせに夫人もろとも部下に絶対的に美化されているアライ公爵の描写は、実は小国としか思えない公国自体の描写も含め、どうしても北の将軍様を連想してしまうのですが・・・。
 ガークと並ぶもう一人の主要人物であるコルネイは、この作品では明らかにされませんが、実は非常に重要な出生に関する秘密というか問題があります。その件は「蟻塚の中のかぶと虫」の中で間接的に語られているのですが、その問題の大きさから考えて、彼が子孫を残す事をコムコンが認めたとは信じがたいので、この作品にちらりと登場する息子アンドレイは養子なのでしょうか。確かにその方が、アンドレイの「このまま縁を切ろう」という言葉がすんなり通るように感じます。
 ところでガークが地球に連れてこられる以前の戦場での断片的なシーンでちらりと登場する黒い人影は、後に地球で彼が出会った「真っ黒」なのでしょうか?完璧なアライ語をしゃべるようなので恐らく同一人物なのだと思いますが、帝国とアライ公国との戦闘の監視をしていたという事なのでしょうか。
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