火星シリーズのファンノベル「火星放浪記」

 エドガー・ライス・バローズの火星シリーズは、「キャプテンフューチャーシリーズ」と共に日本の多くのSFファンにとって子供時代にSFを読む切っ掛けとなったであろう作品です。どちらもそれなりの世界設定が行われており、ファンノベルも多く書かれているのですが、たまたまネット上で次のような作品を見つけ、レベルの高さに感動しました。
火星放浪記
火星のファイドール
 火星シリーズだけでなくバローズの多くの作品は、「異世界に迷い込んだヒーローが、気位の高い姫君に出会い、始めは誤解されながらも、さまざまな冒険の後に彼女を救って結婚する」という同じパターンを持ってします。よくいえば予定調和、悪く言えばワンパターンなのですが、この「火星放浪記」もまた、バローズ本人の作品と見まごう程に同じパターンを踏んでいるだけでなく、文体も創元文庫の翻訳での文体をうまく真似ており、そのままシリーズの続編としても通りそうな作風です。一方で、主人公カイが日本人ならではという場面がいくつかあり、にやりとさせてくれます。

 バローズ本人の作品の模倣という感が強い「火星放浪記」に対して、その続編にあたる「火星のファイドール」はよりオリジナリティーが強く、レベルの高い作品です。既にそれなりの世界設定が構築されているシリーズに関する多くのファンノベルにおいて、その独自設定は安易で無理のあるものが多いのですが、この作品における隠れ都市アルマダ(これはすでに「放浪記」に登場していますが)や復活したサーンとイシス信仰の設定には説得力があり、かなり綿密な構想を練って書かれた作品である事が伺えます。また、カイの視点からの「素朴な疑問」や日本人ならではの視点も面白く、特にカダブラの温泉の一件などはほほえましい情景が目に浮かびました。残念ながら、「火星のファイドール」は中盤の山場あたりで未完となっていますが、なんとかこの先を読みたいものです。

 本来バローズの作品は、科学的考証に関してはかなりいい加減なのですが、この二作品ではそんないい加減なバルスーム(火星)世界を可能な限り科学的に考証しようと試みており、実際にかなり納得のいく説明が行われています。また、おそらく作者が自動車関係の仕事をされているために、驚くほど詳しく飛行船の操縦に関する記述がなされており、また高速飛行艇でのレースシーンには迫力があります。

 同じサイトにあるバーゲン教授のバローズ大検証での火星人の卵に関するユーモアあふれる考察も、実のところ相当の説得力があります。確かに光合成でもしているのでなければ、生まれた卵が大きくなれるはずがありませんよね。「火星人が体内でカルシウムを合成している」というのは、カルシウムは化合物ではなく元素なのでさすがに無理がありますが、浮遊力を産む「第八光線」が存在する世界ですので、この説明もありなのかも知れません。
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