TAS "The Slaver Weapon": 何とも収まりの悪い一話

 以前の記事で、アニメ版Star Trek(TAS)はTOS直後の正史とも見なせると書きましたが、実はそう考えるには整合しない部分も幾つかあります。特にタイトルに挙げた"The Slaver Weapon"は一番始末が悪く、ST世界の正史とは余りにも異なるため、例えば「カトウの見た夢」とでも解釈するより仕方がない話です。ここではyonetchさんのツッコミを参考にしながら、どこが変なのかまたなぜそうなったのかを考察してみます。
 そもそもこの話に登場するエンタープライズのクルーはスポック・カトウ(スールー)とウーラの三人だけで、本来なら主役のカークや三人組の残る一人であるマッコイすら登場しません。これだけでもかなり風変わりなのですが、問題はこの話の敵種族であるクジン人(クーガン人)の設定です。途中のカトウの言葉から、クジンは過去四回に渡って地球と戦争をして全て敗れており、最後の戦争は200年前だったという事が解ります。TOSの時代は24世紀半ばですから、地球とクジンとの四回の戦争は22世紀半ば以前だった事になりますが、どう見てもST世界の正史にはそのような戦争が入る余地はありません。そもそもクジン人という種族はこれまで一度も登場あるいは言及された事はなく、地球とこれだけ密接に関わっていたのはありえない話です。
 実はこの回の話は、脚本を書いたラリー・ニーヴンが自分のSF短編小説"The Soft Weapon"の筋をそのまま流用したものです。この短編は所謂Known Spaceシリーズの中に含まれ、このシリーズでの世界観が正に、「過去四回の地球-クジン戦争があり・・・」な訳です。そして登場人物も、スポックが(パペッティア人の)ネサス、カトウがジェイスン・パパンドロー、そしてウーラが(ジェイスンの妻の)アン=マリーと対応しており、話の展開そのものが全く同じといって差し支えありません。クルーが三名しか登場しないのもそのためです。
 しかし翻案ならともかく、この「流用」レベルは余りにも酷すぎます。例えばクジンをやはり戦闘種族であるクリンゴンに焼き直すだけでもかなり違ったはずです。もちろん「敵を物理的に食べてしまう」というクジンの習性等は、クリンゴンに合うように適当に修正が必要ですが、原作のアイディアの本質は「自立思考可能な太古の超兵器が現代に蘇ったとき、どう判断しどう行動するか?」なので、そこだけ生かせれば枝葉の部分はいくらでもST世界に合うようにできたはずです。また「太古の超文明」も、ST世界にも幾らでも例があるので、そちらに焼きかえれば良いはずで、その手間を惜しんで原作小説そのままの脚本を出すという手抜きをしたニーヴンの罪は重いですが、それにOKを出してしまった製作側の罪も同じくらい重いでしょう。いずれにせよ、この話のおかげでTASがStarTrekの正史から浮いた存在になってしまうとしたら残念な事です。
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テーマ:アニメ - ジャンル:アニメ・コミック

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おっと、TASの記事が(今更でスミマセン)。

ホントにひどいエピソードでしたよね。
堂々とテロップに流用を謳ってるところがもう救いようがないという気がします。
当時のスタッフ、何を考えてたんでしょうね。

記事にも書いたように、ニーヴンだけでなくこの脚本を通してしまったスタッフの責任も重大だと思います。以前に書いた「酷い翻訳についての考察」
http://x2babylon5blog.blog111.fc2.com/blog-entry-139.html
でも同様の事を指摘していますが、送られてきたものを読んでないで、そのまま素通ししているのではと感じることがままあります。関門の仕事の人は、きちんとその役割を果たしてほしいですね。
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