星の船 (I.エフレーモフ著:世界SF全集22収録)

 早川書房の「世界SF全集」の22巻はエフレーモフに当てられており、長編「アンドロメダ星雲」と合わせて彼の初期SF作品「星の船」が収録されています。
恐竜時代の地球を異星人が訪問していた形跡が化石から発見され、科学者がさまざまな推測を重ねた結果、ついに異星人自体の頭骨化石を発掘するという展開は、ジェイムズ・P・ホーガンの傑作SF「星を継ぐもの」を連想させるのですが、発見された頭骨と遺品を前にした主人公の二人が、その異星人についてさまざまな想像をめぐらせる、という所で終わっているので、「星を継ぐもの」が初っ端だけで終わっているような感じのするやや奇妙な作品です。もちろんこの作品では問題の異星人が地球に居たのは数千万年前なので、現在彼らがどう進化しているのか、そもそも存在しているかすら微妙であり、「星を継ぐもの」のような展開は難しいのですが、やはりソビエトSFと西側のそれとの質的な差(どちらが上か下かという問題ではなく)なのかもしれません。
 銀河内での軌道運動によって太陽が周期的に銀河中心に近づくという設定はやや疑問もありますが、生物の大全滅等の原因を太陽系の銀河内運動に求めるアイディアそのものは、現在でもあり得る仮説の一つとされています。この作品の大きな特徴は、地質学や古生物学の知識が豊富に盛り込まれている点です。実はエフレーモフは優れた古生物学者でもあり、化石の発掘を通して地質学にも通じているため、その知識がこの作品には多く盛り込まれています。造山活動の原動力が地殻の超ウラン元素の崩壊によるもので、恐竜の大全滅もその放射能によるものだというアイディアは現在の知識からすると間違っていますが、大陸移動の原因であるマントル対流の原動力が地球内部での放射性元素の崩壊熱である点自体は正しい訳で、この作品が発表された1947年当時は大陸移動説が未だ認められていなかった事を考えれば、科学的におかしな事を書いている訳ではありません。
 一方で、これも時代を反映しての事でしょうが、作品のラスト10行のソビエト社会主義に基づいた進歩麗賛は唐突すぎでかなり興ざめでした。興味深く聴いた話の最期にいきなり取って付けたような「教訓」を聞かされてしまったような感じで、エフレーモフがこれを本気で書いたのか、それとも検閲その他の都合なのか、そちらの方が気になってしまいます。 
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