アンダーグラウンド

 旧ユーゴスラビア出身の有名な監督であるエミール・クストリッツァの、第二次大戦以降のユーゴスラビア史をテーマにした3時間近い長編映画です。紀伊国屋から出ているDVDで観たのですが、映画本体も然ることながら、二枚目のディスクに収録されているクストリッツァの50分以上に渡るインタヴューが必見です。一方ではヨーロッパ統合を謳いながら、他方では旧ユーゴスラビアの崩壊を容認した、というより紛争当事者の一方のみに肩入れして積極的に崩壊させた西欧諸国とその文化人たちに怒りをぶつけ、彼らの罪を問う彼のインタヴュアーへの反問と、その問を何とかそらして別の質問に持っていこうとするインタヴュアーとのやり取りが完全にかみ合わないままに延々と続くこのような「インタヴュー」は、これまでちょっと観た事がありません。チトーへの厳しすぎる評価を除けば、私自身かなりクストリッツァの主張に共感できるので、余計にインタヴュアー側のオタオタ振りが見えてしまって、ある意味映画本体と同じくらいに可笑しかったです。
 さて映画本体ですが、マルコ、クロとナタリアという三人の主要人物はいずれも一癖あるというか、どちらかといえば「悪人」です。マルコが現実のユーゴ共産党幹部を象徴しているのは明らかですが、ユーゴ国民を象徴していると思われるクロの方も決して善人ではなく、街の厄介者に近い男がいつの間にかレジスタンスの英雄に祭り上げられた人物です。マルコに騙されて仲間たちと一緒に地下生活を続けている点は確かに被害者なのですが、チトーの名が出ると思考停止して命令に従ってしまう様は、チトー独裁下におけるユーゴ国民そのものです。そして地下室の崩壊(現実世界ではユーゴ連邦崩壊)後の内戦では、これも現実の民衆そのままに、再び無意味な戦いを続ける荒くれ者に戻っています。またナタリアは恐らく連邦時代に国家権力の太鼓持ちと化した「芸術家」を象徴していると思われます。
 内戦状態の旧ユーゴに武器商人として再登場したマルコには国連軍の護衛が付き、彼の商談にも国連軍が立ち会っていますが、これは恐らく紛争に加担して連邦を破壊した現実の国連へのクストリッツァの非難の表れでしょう。一方で部下にマルコの処刑を命じた後で真相に気づいてショックを受けるクロの姿は、近親憎悪に駆られた内戦を繰り返した後でようやく正気に戻って唖然としている旧ユーゴの人々を表しているように思えます。
 ところで、第二次大戦時に迫害(特にナチスによるユダヤ人迫害)を免れさせるという名目で地下室にユダヤ人を匿った者たちが、戦争を終わった事を知らせずに何時までも彼らを地下に閉じ込め続けるというプロットは、他でも見たことがあるような気がします。短期間なら実際にありうる話ですが、元ネタがあるのでしょうか、それともこの映画(あるいは原作)が元ネタなのでしょうか?
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