創世の島 (バーナード・ベケット:早川書房)

  piaaさんのブログで紹介されていて興味を持ち、図書館で探して読んでみました。なるほどかなり良く書けたSFで、特にアダムとアートとの「生命とは何か、また意思とは何か」という哲学問答は、下手な哲学書よりよほど本質を突いているように思います。
「生命とは何か」という議論は、これまでも多くのSF作品で展開されています。この議論に関して個人的に印象に残っているのは、「アンドロメダ病原体」の原作でのエネルギー変換を生物の認証印とするアイディアに対するレヴェットの反論なのですが、自己複製と増殖という特徴のみに注目するなら、確かに「粘土層」すらも一種の生命形態と見なせるのかもしれません。アートが挙げていた3番目、4番目の生命形態というのはつまり、3番目がアート自身が代表する電子生命体で、最後の一つが「思考」あるいは「思想」という事なのでしょうね。この、思考や思想が人間と独立した(というより人間に寄生した)新たな生命形態というアイディアは完全に意表を突かれました。確かにサイバー空間上の自己増殖プログラムのように物理的実体を伴わないものも含めて生命かどうかを考えるのならば、増殖し進化する思考や思想もまたその対象となりうる訳ですが、やはり思考を行う物理的実態が存在してのもののような気がします。もっともこれもまた、旧来の偏見に囚われた考え方なのかもしれません。
 piaaさんの記事を読んでいたため、アナックスたちの正体に関しては初めからある程度の予想はつきましたが、アートの狙いに関してはアダム同様に完全に騙されました。ところで、アダムの方の運命ははっきりしていますが、イブの方はどうなってしまったんでしょう。彼女の運命は主題から関係なくなっているとは言え、密かに処分されたのかあるいは生き延びたのかはかなり気になる所です。最後まで読んでみると、カバー絵の少女は明らかに主人公のアナックスではなくてイブなのでしょうね。確かにアートらの種族の視点からすると、アダムとイブはある意味で「種族の父母」に他ならない訳なので、その後の歴史でもあのような扱いをされているのでしょう。
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あれ?私の記事そんなにネタバレしてましたっけ?
ああ、まあ確かにアナックスがああなっちゃうことはネタバレしてたかも。

かなり上手く書かれた作品ですが、内容がアレなのではっきり好き嫌い別れるかなと思いました。
ちなみに私はこの作品、面白かったは面白かったですが、正直あんまり好きではありませんでした。

 piaaさん、 実はアナックスの運命の方ではなく、彼女らの正体の方が途中である程度想像がつきました。そちらの記事から直接解ったというわけではないのですが、「アダムの活躍によって閉塞を脱した人類が新たな発展を・・・」とかいう展開だといかにもありきたりで、そのパターンはpiaaさんの書き方からみてなさそう、そうすると実はその逆だなと感じたわけで。
 確かにこの作品はかなり特異な作風で、好き依頼が分かれそうです。私も面白いとは思うものの、好きかと言われるとかなり微妙ですね。
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