エボラ出血熱を正しく恐れるという事

 西アフリカでのエボラ出血熱の大流行が続く中で米国やスペインでも感染者が現れ、さらには日本でも感染が一時疑われた入国者が現れるに至って、特にネット上で様々な流言飛語が拡散しています。悪意はないが無知による誤解だけでなく明らかに外国人憎悪を煽る意図的な暴言も見られ、いずれは現実社会でのヘイトスピーチにも繋がるのではと憂慮される状況です。もちろんエボラ出血熱は非常に危険な伝染病である事は間違いないのですが、以下に示すように実際には日本を含む先進国では流行する可能性は極めて低く、「正しく恐れる」事が必要です。
 基本的に伝染病はその毒性と感染力とはトレードオフの関係にあり、毒性が高くて感染力も強いという事はありません。これはその病原体の進化過程を考えれば解る事で、毒性が強い感染症は宿主をすぐに殺すために感染を広げる事ができず、生存競争で不利になります。病原体としては宿主を殺すのは目的でなく、単に自分自身の子孫を多く残す事が目的なので、宿主に害を及ぼすのはむしろ失敗であり、最も成功している「病原体」は宿主と共存共栄している共生生物です。エボラ出血熱ウィルスの場合人間を宿主としたのは最近の事であるためにまだ淘汰過程が有効に働いていないだけであり、致死率と感染力のどちらかは低下していくはずです。実際、西アフリカにおいてすら、当初9割とも言われてきた致死率は5割以下に下がっており、先進国内で二次感染した患者は全て治癒しています。また、感染には感染者の体液との接触が必要であり、先進国においては治療現場に限られていますから、たとえ外部から感染者が入国してきても医療現場以外の一般社会に感染が拡大する事はほとんど考えられません。日本を始めとした適切な医療が行われている社会においては、必要以上に恐れる必要はない病気と言えます。
 一方で流行が続いている西アフリカでは状況がかなり異なります。特に内戦等による破綻国家においては、効果的な医療や封じ込めが行えないために、そのような国に感染が広がった場合は、収束までに相当の犠牲者が出る可能性が高いです。その意味で現在一番心配なのは感染の拡大が始まったマリであり、封じ込めに失敗すれば現在までに多くの死者が出ている三カ国と同様の状況に陥る可能性が高いでしょう。

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