ピリタ、カルヤラの少女 (カアリ・ウトリオ著:彩流社)

 1470年代のロシア北西部からフィンランド・カレリア地方を舞台とするフィンランドの女性作家の歴史時代小説です。主人公のフィン人少女ピリタはノブゴロドの商人貴族のアヴラアモフ家に奴隷として売られ、やがて若当主アフィムの妾となって男児を生みますが、その後モスクワ公国のイワン三世によるノブゴロド征服により逃亡したアフィムに従ってカレリア地方を流浪する事になります。当時の女性の例に漏れず彼女の運命もほぼ相手の男次第であり、比較的恵まれていた富豪の妾奴隷という立場はアフィムの逃亡後は一転し、地位も富も失った粗暴な男と化したアフィムに振り回され、自分の生んだ子を含めて三人の子供の面倒を見ながら散々な苦労を舐めていきます。そのような彼女の生き様は、もしかするとスウェーデン・ロシア・ドイツといった周辺の大国によって翻弄され続けてきたフィンランドそのものの姿を映しているのかもしれません。
 確かにノブゴロドの歴史を動かしているのはノブゴロドの貴族たちやモスクワ公国のイワン大公などの男たちなのですが、支配者が誰に代わろうと女たちは同じように生き続けるという達観のようなものが作品全体を貫いています。。この辺は世界的に見ても男女平等社会である北欧の女性作家ならではと感じます。
 比較的善良に描かれているアヴラアモフ家の女性たちに対し、前市長の寡婦である美女マルファは貴族たちをモスクワ公国との対立に駆り立ててついにはノブゴロドを破滅に導く悪女として描かれています。アフィムもまた彼女の魅力の虜となったあげく、無一文での逃亡を余儀なくされ、ついにはカレリアの奥地で無残な死を迎えました。彼女が実在する人物なのかは不明ですが、モスクワ公国によるノブゴロド併合自体は歴史的事実に基づいて書かれており、おそらくこの物語にあるような多くの粛清者が出たのでしょう。なおこの一世紀後にはイワン三世の孫に当たる雷帝によってノブゴロドは全住民の3/4が殺されるという大虐殺に見舞われてます。正直なところ、この本を読むまではこの時代のロシア史に関してほとんど何も知らなかったのですが、今回調べてみてロマノフ朝以前のロシアの歴史について色々と学ぶところがありました。
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