ユリシーズの瞳 (テオ・アンゲロプロス監督:ギリシャ映画)

 169分という非常に長い作品ですが、今年見た中で最も印象深い映画となりました。特に近年のヨーロッパ映画は多国籍とでも言うべき合作が多く、この映画も製作国はフランス・イタリアとなっているのですが、ギリシャ出身の大監督によるギリシャを含むバルカン諸国の歴史を俯瞰する映画なので、やはりギリシャ映画というくくりになるかと思います。
 20世紀初めのバルカン半島でマナキス兄弟によって最初に撮られた未現像の映画フィルムを探し、20世紀末の混迷するバルカン諸国を30年ぶりに故国ギリシャに帰国した主人公が旅するというストーリーには、もちろんタイトルの通りにオデッセウスの放浪が重ねられているのですが、もう一つアルゴナウタイによる金羊毛の探索の伝説も重ね合わされているように感じます。そして何と言っても、内戦下のサラエボで幻のフィルムにめぐり合い、博物館の老館長を励まして現像に成功して遂に映像を観られる、という所で起こる惨劇は、霧の中のつかの間の平和の直後だけにあまりにも衝撃的です。
 ネット上でのこの映画のレヴューでは、あまりに冗長すぎて意味不明のシーンが多い、何を言いたいのか解らないという感想が結構あるようです。確かに近現代の東欧史、特にバルカン諸国の歴史に興味がない人にとっては、ユーゴ連邦崩壊後の混迷、特にボスニア内戦の悲惨さについてもピンと来ないのかもしれません。例えばアルバニアに住む妹に47年ぶりに会いに行く老女のエピソードは、アルバニアが東欧の中でも際立って閉鎖的な国であった事を知っていればより意味づけが解りやすくなると思いますし、「マケドニア」という国家名自体をギリシャが認めていないため首都と同じ名のスコピエと呼ばれているとか、ブルガリアやルーマニアの近代史をある程度知っていると、関連するエピソードをより理解しやすいでしょう。
 また、主人公の(現代の)映画監督Aが旅の途中での、20世紀初頭のマナキス兄弟や自分自身の子供時代の幻想を主人公が現実時間の姿そのままで体験しているのもこの映画の特徴で、この点は私自身も混乱しました。特にベオグラードから川を使ってサラエボへ潜入するまでの部分では、第一次大戦で荒廃したブルガリアに潜入したマナキス兄と農婦との交流エピソードを、しばらくは現在のサラエボでの主人公の実体験なのだとばかり思っていました。いくつかのネット上レヴューを読むと、このエピソードを含めかなり混乱して誤解したままの方が多いようです。
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