蜘蛛の巣 (ヨーゼフ・ロート著:白水社)

 piaaさんのブログで知って借りた白水社版の「聖なる酔っ払いの伝説」には、この中篇が含まれていませんでした。そこで改めて今回この一遍だけで単行本となっている白水社版を読んでみました。なるほど、これが書かれたのがナチスが政権を取るはるかに前、ミュイヘン暴動の直前だったというのにはただ驚くしかない、見事なまでの予言的な作品です。その時点ではナチスは全国的な組織ではなく、またヒトラーもバイエルン地方の人物に過ぎなかったわけですが、その危険性は見る人が見れば明らかだったという事でしょう。実のところ、ローゼも現実のヒトラーらも特定のイデオロギーなどはなく、自分たちが命令されるのではなく命令する立場に立ちたい、そのためには手段を厭わないという人物ですが、それがゆえに極めて危険な人物です。ただしこの小説の場合はその主人公をさらに煽り立てて社会を混乱に導き、最後にはアメリカに逃亡する破壊的な性格の人物が背後に居る訳ですが、その部分は現実とはやや異なるようです。
 現実社会と重なって恐怖を感じざるを得ないのは、主人公ローゼや彼のグループの主張が現在の日本で行われるようになった(特に外国人に対する)ヘイトスピーチと重なる点です。そしてその主張はまた、今回の総選挙での「次世代の党」の主張とも重なっています。今回の選挙では幸いにもその主張が大きな共感を得る事はありませんでしたが、もし社会に対する不満がさらに高まった場合、次回以降の選挙でも彼らが大きな支持を得る事がないのかについて、かなりの不安を感じます。
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