経済政策で人は死ぬか? -- 公衆衛生学から見た不況対策 (デヴィッド・スタックラー&サンジェイ・バス共著:草思社)

 少し前に新聞の書評を読んで興味を持った本を図書館の新着コーナーで見つけ、早速借りてきました。金融恐慌などの大不況時におけるいろいろな国で取られた対策がどのように作用したのかを検証した、かなり本格的な内容の本なのですが、その割にはかなり読みやすく、2-3日で読み終わる事が出来ました。これまで、現在の日本の財政状況から見る限り消費税の10%さらにそれ以上の再増税は必要で避けられないと考えていたのですが、その意見を変えるべきかもしれないとこの本を読んで思い始めています。
 国家破綻寸前となった2006年の金融危機から数年で立ち直ったアイスランドと今だ混迷が続くギリシャ、あるいはその前のアジア金融危機におけるタイとマレーシアとの経済対策を詳しく比較し、社会保障分野の予算を大幅削減させたIMFの指示(というか命令)が貧困者の健康を蝕んで社会不安を招き、結果的に深刻な不況を長引かせているという分析は説得力があり、どんな深刻な不況下であっても社会保障や保険衛生に関する予算は削減してはならないという指摘には納得しました。海外からの預金を大量に集めた大銀行をIMFの要求を無視して破綻させたアイスランドの対応にはその当時相当な批判がありましたが、IMFの要求に屈したギリシャの現状と比較するともはや勝敗は明らかです。ただ、オバマ政権下の米国とキャメロン政権下の英国との比較に関しては、現時点ではまだまだ優劣がはっきりしないので判断は保留します。さらにいえば、アイスランドとギリシャの比較でも、金融危機以前の両国社会のあり方がかなり異なるので、単純に危機時の経済政策だけの差で明暗が分かれた訳ではないとも思います。もう一つ興味深かったのは。ソ連崩壊後のロシアとベラルーシとの比較です。ベラルーシといえば非民主的な独裁者であるルカシェンコ大統領の悪名が高い国なのですが、それでも経済的にはロシアよりも早く混乱から立ち直っていたのは意外でした。
 一方でネット上の書評の多くでは、「だから消費税を上げるべきでなかった、再増税などもっての他」という論調が目立つのですが、その議論にはやや違和感があります。この本の主張はあくまでも、大不況時こそ社会福祉分野への積極投資が効果があるというものなので、消費増税の是非とは直接関係しないのではないでしょうか?
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