黄金時代 (ミハル・アイヴァス著:河出書房新社)

 以前に紹介した「もうひとつの街」の作者が2001年にチェコで発表し、2010年に英訳が出版されてamazon.comでSF/ファンタジー部門の一位となった作品です。実はこの本も読んだのは先月初めで、文章がまとまらないままにしばらく放置していました。「もうひとつの街」と比べると、作品内で何が起こっているのかはかなり理解しやすいのですが、また別の意味で読んでいてかなりの混乱をきたします。
 架空の島の文化・建築やそこでの人々の暮らしを描いた前半部分は、イタロ・カルヴィーノの「見えない都市」を連想させるものですが、実際にそこで現地の恋人と共に数年間暮らした語り手の経験談として書かれているために、より濃密な描写で描かれています。島における「文字と現実との一体化」に関連して、島の外での出来事が数章にまたがって語られ、特にその内の女泥棒の語るとてつもなく細密な絵の話はそれだけで別の幻想小説の趣があるのですが、この「千夜一夜物語」的な展開は、後半の「本」の一部を紹介する部分ではさらにはっきりとしてきます。
 島に唯一存在するこの「本」は一応は文学作品なのですが、誰でも自由に加筆訂正が可能であり、さらに偶然によって一部が消えたりもするという、ある意味現在のインターネットそのものに近い代物です。読者が自由に付け加えた話が例えば登場人物の語る作中話となり、その作中話にさらに作中話が入ったりと、この辺は正に「千夜一夜」と同様なのですが、書き込みが部分的に消えたり失われたりするために、作中話の深さレベルさえもあいまいになってしまっているとの事です。実際に詳しく紹介されている二つの王家間の復讐物語に関しては幸いそこまでの複雑さはないものの、それでも読んでいて自分が今読んでいるのがどのレベルなのかは混乱しました。
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