空洞地球 (ルーディ・ラッカー著:ハヤカワ文庫SF)

 以前にちらりと触れたシムズの「地球空洞説」が実際に正しく、エドガー・アラン・ポー一行が南極側に開いた開口部を通ってその空洞に入って探検する、という一見するとかなりの怪作なのですが、相当にしっかりとしたハードSFの要素を持っています。さらにポー自身の「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」や(それに触発された)ラブクラフトの「狂気の山脈にて」の要素も取り入れた中々の力作で、後半の意表を突く謎解きはさすがというべきでしょう。
 もし実際に地球の中が空洞になっていた場合、Newton力学に従えばその中では無重力状態となり、さらにその内部表面を照らす物質的な中心光源が存在すれば、内部のものはその光源の重力に引かれて中心に落ち込んでしまいます。つまりペルシダーのような世界は存在しえません。この困難を回避するために作者が考えたのは、中心光源が物体ではなく「もう一つの地球」への入り口、つまりワームホールであるという説明です。もちろんそれでも空洞内部が(ほぼ)無重力状態であるのは同様で、内部表面に水の粘着力によって保持されている大海と陸地には巨大な植物が生い茂り、人間を含む動物たちもほぼ自由に内部を浮遊できる事になっています。
 この中心ワームホールの向こう側の世界はもう一つの地球(鏡像地球)の内部空洞なのですが、鏡像地球には極の開口部が存在せず、その点では対称性が崩れています。しかし鏡像地球の外側表面は元の地球と同様の世界が広がり、両方の世界はほぼ完全なミラーユニバースでポーを初めとする主人公たちを含む人々が両方に存在し、物語序盤に起こったある事件までは両者はまったく同じ人生を歩んできたという設定は、やや無理があるものの中々うまくできています。この設定によって、実は我々読者の世界は物語のはじめから見れば鏡像の方であり、そちら側に抜けてきた主人公の手記を読者が読んでいるという意表を突く展開が実現されると共に、(我々の現実世界での)ポーの死を巡る謎の解明にも結びついています。
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