「カーデシア戦争」に関する考察

 記事が消えてしまった以前のブログで表題に関する考察を書いていたのですが、yonetchさんの翻訳ツッコミによって新たな情報が得られたので、改めて記事を書きます。
 ST-TNG第4シーズンの"The Wounded"は、「惑星連邦とカーデシアとが続けてきた戦争から一年経った」というPicardの独白(実際には航星日誌の記載)から始まります。しかしこの回に至るまでカーデシアとの戦争という話は一回も登場せず、それどころかカーデシアという国家や種族の存在さえも話題になっていません。さらに言うと第2シーズンの"Peak Performance"において「艦隊初の軍事演習」が行われた際に、Riker副長は「(軍事演習の)必要性を感じない」と言っており、それまで軍事演習が行われていなかった事も併せて考えると、基本的に平和が続いていた事が想定されます。従って「カーデシアとの戦争」というのは一体何なのか極めて不思議であり、恐らく(メタ的には)急遽変更された後付け設定の可能性が高そうです。
 この後付けを行った理由として考えられるのが、TNGにおける使いやすい敵対種族の不在です。TOSにおいてはクリンゴンとロミュランという連邦に対する敵対種族が存在し、彼らとの対立がしばしば物語を動かしてきました。TNG世界ではクリンゴンとは一応の和解が成立し、シリーズ前半ではロミュランもしばらく表舞台から退いています。本来TNGでの敵対種族となるはずだったのは恐らくフェレンギなのですが、彼らは「敵」としては魅力に欠け、むしろコミカルな種族として使われるようになり、それならと新たに登場させた"Conspiracy"の寄生生物はおぞましいばかりでこれもクリンゴンのような敵としての魅力はまったくありませんでした。次に登場した敵がボーグですが、彼らは敵として余りにも強力すぎて何度も話に絡ませるのは不可能です。
 おそらくこういった理由によって最後に登場したのがカーデシアだったのでしょう。彼らのレベルは正に、「連邦には劣るが決して侮れない」レベルであり、シリーズを通しての敵対種族としては理想的です。しかしそのような種族をシリーズ中盤になって初めて登場させるのは無理があり、その結果が始めに書いたような奇妙な設定となったのだと思われます。
 さてここまで書いてきたのは、ほぼ以前の記事内容と同じなのですが、yonetchさんの"The Wounded"のツッコミを読むと、「(連邦とカーデシアとの)長年続いた戦争」と吹きかえられていた元の英語は"the long conflict between the Federation and Cardassia"でした。ここで使われている"conflict"は通常は「紛争」を意味し、戦争とはレベルの異なるものです。つまり長年続いていたのはあくまで国境紛争であり、全面戦争ではなかった訳です。もちろん国境紛争レベルであってもRikerの言葉が示唆するような平和状態ではないのでやや矛盾を感じるのですが、少なくとも吹き替えで聞いたときほどの違和感は感じないで済みます。
 ここでもう一つ面白いのは、カーデシア側のGul Macetははっきり"war"という単語を使っている点です。深読みしてしまうと、これは連邦とカーデシア双方の認識の違いを表しているように思えます。連邦特にその首脳部はあくまで「国境の局所的紛争」とみなしているのに対し、カーデシアの方は「連邦との戦争」と考えている。これがその後のベイジョーやマキの扱いに現れているように思えます。さらに言うと、たとえ連邦全体から見れば小さな「紛争」であっても、そこで戦った兵士や巻き込まれた市民にとっては酷い戦争と変わらなかった訳で、それが正にマキの立場に他ならないのでしょう。
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カーデシア*戦争*

ひさびさの掘り起こし記事ですね。

conflictを「紛争」と訳したのは、ワタシの独自解釈にすぎませんので念のため。
この辺りのことは、掲示板↓にて
http://www3.rocketbbs.com/731/bbs.cgi?id=yonetch&mode=view&tree=400
少しやりとりしてますが、ご記憶でしょうか。

ところで、DS9"MAQUIS, PART I"のツッコミをアップしたのですが、時系列的に言うとTNG"JOURNEY'S END"のすぐ後なんですけども、話として正に繋がってました。時系列メモを始めて久しいですが、ようやく目的の成果をみたという感じです。

No title

yonetchさま、

> conflictを「紛争」と訳したのは、ワタシの独自解釈にすぎませんので

うわっ、前のブログ時代に一度この件を議論していたんですね。忘れていました。
ただ"conflict"と"war"とはやはりはっきり違うと思うので訳し分けるべきだと思います。そして"conflict"の標準訳が「紛争」というのも間違いないでしょう。
本文の補足をすると私の解釈は、
連邦側、特に艦隊本部は「国境紛争」と認識しており、紛争の原因を取り除くために一部の殖民星を譲渡するのもやむなしと考えているのに対し、カーデシア側は自分たちの星域に攻め込まれた戦争と捉えており、その結果苛烈な反応をしているのでは、という事です。

敵対種族としてのカーデシア人

確かDS9のDVD特典映像だったかと思うのですが、DS9制作サイドの裏話がありました。TNGのスピンアウトシリーズ(つまりDS9)の企画が決まった時点で、TNG側でその理由付けを行うストーリー立てが行われた、というようなことが語られたと記憶しています

つまり、カーデシア人やベイジョー人というのは、初出こそTNGですが、そもそもDS9のために設定された種族だったようです。DS9を初めて視聴したときには、うまくTNGから引っ張り出したものだと感心していたのですが、話は逆だったワケですね。

No title

> カーデシア人やベイジョー人というのは、初出こそTNGですが、そもそもDS9のために設定された種族

なるほど、納得できる話です。だからこそあんな無理な形でいきなり敵対種族が登場した訳ですね。実際に観ていた立場から言うと、(カーデシアとのゴタゴタが描かれている)数シーズン分がすっ飛ばされたのかと思ったくらいでした。
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