ドウエル教授の首 (アレクサンドル・ベリャーエフ著:未知谷)

 有名な文学作品の場合、ジュブナイル版を読んで知った気になってしまい、原作を読まないままになってしまうという事がしばしばあるように思いますが、私にとってはこの作品もそうでした。子供の頃に読んでいるのは確実なのですが、今回未知谷(みちたに)からの新訳版を読んでみると、非常に大まかな筋以外はほぼ覚えておらず、初めて読んだも同然の有様でした。
 初っ端からドウエル教授の「生きている首」が登場し、その後も次々と事件が起こる急な展開は冒険小説さながらですが、書末の訳者補記によると元々は新聞に連載された作品だったようで、それなら納得がいきます。美貌で勇気のあるヒロインが驚くべき事件に巻き込まれて危機に陥り、それをヒーローが救いに行くという定番展開は今となってはかなり古めかしく、ラストが悲劇に終わるのがむしろ奇妙な感じがするほどです。
 騙し討ちによって「生きている首」とされたドウエル教授がその騙した相手のケルンに怒りを向けずに指導し続ける姿は、ある意味「これぞ科学者の鑑」というべきなのでしょうがさすがにかなり異様で、むしろケルン以上にマッドサイエンティストそのものかもしれません。一方で彼以外の主要登場人物はいずれも感情的な行動が目立ちます。ドウエル教授に身近に接し続け、ケルンの非道な仕打ちを知って義憤に駆られたマリーや、教授の息子であるアルトゥールは兎も角として、アルマンなどはかなり直情的で読んでいていらっと来るほどでした。ただ、ブリケやトーマの行動?は無理ないかもしれません。
 ところで、ブリケのように別人の体と首を繋ぐのは免疫的に不可能としても、現在の医療技術でこの「生きている首」自体は実現可能なのでしょうか?可能なような気もしますが、実際にそのような方向の研究事例がないのは「首だけで生きさせる」治療に医学的メリットがないからでしょう。例えば心臓を損傷した患者なら、とりあえず人工心臓を使ってから心臓移植をすれば体を失わずに済む訳ですから、この処置を選ぶ医者や患者は存在しないでしょう。
スポンサーサイト

テーマ:本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

X^2

Author:X^2
このブログは、旧ブログ
Babylon5以外のメモ
からの移転先として立ち上げました
。連動するホームページである
Babylon5 Episode Guide
にもどうぞ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
リンク