裏面 -- ある幻想的な物語 (アルフレート・クビーン著:白水社Uブックス)

 図書館の新刊コーナーでたまたま見かけて借りた本です。著者のクビーンはカンディンスキーやクレーとも交流があるボヘミア出身の幻想画家として知られており、この「裏面」は彼の唯一の小説とされています。非常に奇妙な幻想小説であり、不気味というより不条理という形容の方がぴったりする「夢の国」とその滅亡の様は、確かにフランツ・カフカからミハイ・アイヴァスの作品に続くチェコ幻想小説の一部を占めていると感じます。
 偶然の出来事によって大富豪となったパテラが中央アジアのどこかに作った「夢の国」ペレルは、創設者であるパテラから招待された者のみが訪問し居住できる閉鎖世界ですが、そこの建物はすべてヨーロッパ各地の古い建物を移動させたものであり、日常の品物さえも年代ものの中古品のみしかありません。さらに、そこには近代国家のもつべきものが何一つ存在せず、どうやって運営されているのかが理解できない世界です。もちろん幻想小説なのだから不思議はないといえばそれまでなのですが、私にはむしろアメリカを代表とする近代国家からみた古いヨーロッパ、特にハプスブルグ君主国の戯画のように思われます。中盤になって登場したエネルギッシュなアメリカ人の百万長者との対決によってペレルがもろくも崩壊、というより自壊していくのは、正に君主国の没落と崩壊と近代国家アメリカの台頭を象徴しているかのようです。
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