クローヴィス物語 (サキ著:白水社Uブックス)

 ビルマ生まれの英国人作家サキ(本名 Hector Hugh Munro)は、O.ヘンリーと並ぶ英国短編作家の双璧とされ、日本でも多くの作品が紹介されています。実際、この短編集の中の何篇かは、私も過去に呼んだ記憶がありますが、あとがきによると実は日本で翻訳されたオリジナル短編集は、この「クローヴィス物語(原題は"The Chronicles of Clovis")が最初であるというのは相当に意外でした。そう言われてみると確かに、サキ作品はさまざまなオムニバス短編集の中の一遍としてしか読んだ事がなく、同じ人物が登場している事もこの短編集を通して読むまで気づきませんでした。
 サキの短編小説は並び称されるO.ヘンリー作品とは対照的で、英国貴族階級のスノッブさと嫌味をそこかしこに漂わせる毒のある作風です。それは特に、題名にあるクローヴィスが主人公あるいは語り手となっている作品において顕著で、トリックスター的な彼に家庭を引っ掻き回されたり、最後の彼の毒舌の一言で冷笑されたりと、貴族やその夫人たちがコケにされています。もう一つの怪奇小説的な短編群は、英国の田舎の片隅に今も存在している非キリスト教的なものにより、そこに踏み込んだ者が災難に遭うなど、運命に翻弄される人間たちをやや突き放した視点で描かれているものです。
 ところで筆名の「サキ」の由来ですが、南アメリカに生息する小型のサルの名前から取ったもので、「ローマ帝国衰亡史」の著者である歴史家ギボンの名がテナガザルを意味するところから、ギボンには及ばないまでも彼に敬意を表する意味でつけた、という説を読んだ事があります。実際にサキ自身も「ローマ帝国の繁栄」という歴史書を書いているので、この説はかなり有力ではないでしょうか。
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