偉大なる失敗 -- 天才科学者たちはどう間違えたか (マリオ・リヴィオ 著:早川書房)

 ダーウィン、ケルヴィン、ポーリング、ホイル、アインシュタインというそれぞれの時代・分野を代表する科学者たちの犯した学術上の過ちとその原因について詳しく考察したノンフィクションです。取り上げられている5人のうちダーウィンとアインシュタインは説明不要でしょう。、ケルヴィン(本名はウィリアム・トムソン)は特に熱力学分野でさまざまな法則を発見した19世紀を代表する物理学者、ライナス・ポーリングは化学結合の本質を解明し、化学賞と平和賞で二度のノーベル賞を受賞した化学・生化学者、そしてフレッド・ホイルは恒星内での元素合成理論の基礎を築いた天体物理学者です。ただし、フレッド・ホイルに関しては、上に書いた業績よりもむしろビッグバン宇宙論のアンチテーゼである定常宇宙論の提唱者としての方がはるかに有名で、これが「偉大なる失敗」の一つとして正に取り上げられています。
 実のところ、私がこの本の目次を見て登場する五人の名前を確認した時点で、ケルヴィンとホイル、アインシュタインの三名に関しては、彼らの「偉大なる失敗」が何を指しているのはピンと来ました。一方でポーリングに関しては別の「失敗」(ビタミンC関係)を想像したのですが、実際にはワトソン・クリックのDNA二重螺旋モデルの直前に提出した三重螺旋モデルの方で、読んでみると確かにこれは壮絶な失敗でした。そして「当時信じられていた混合遺伝説の元では自然選択は有効に働かず、メンデルの法則を見出すべきだった」というダーウィンの「偉大なる失敗」はこの本を読むまで認識していなかったのですが、これも読んでみてなるほどと感じました。ただこれに関しては、ダーウィンには酷かもしれません。
 ケルヴィンの失敗として取り上げられている、地球の冷却時間から導かれた地球年齢の誤推定に関しては、かなり有名な話なので私自身も良く知っているつもりだったのですが、実際には誤解がありました。地球内部のトリウム・ウランによる原子核崩壊熱の存在を見落とした事がケルヴィンの失敗の主原因と思っていたのですが、本書によると実はそうではなく、マントル対流によって中心の熱が効率的に伝導する事を見落とした方がより大きなウェイトを占めているとの事です。
 また、アインシュタインの「最大の失敗」とされる宇宙項ですが、現在宇宙論で華々しく復活し、宇宙項の導入ではなくてそれを取り除いた事の方が「失敗」だったとされている事は良く知っていました。しかし、「最大の失敗」という標語がどうやらガモフがアインシュタイン自身の発言としてでっち上げたらしいというのは、本書を読んで初めて知りました。
 
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