ウイダーの副王 (ブルース・チャトウィン 著:みすず書房)

 少し前に新聞の書評を見た後に図書館の新刊コーナーで見つけたので、借りて読んでみました。著者のブルース・チャトウィンは生前に五作の著書のみを残したかなり寡作な英国の作家で、この小説はその二作目となります。分類としては英国文学になる訳ですが、19世紀西アフリカ奴隷海岸にあったダホメー王国(現在のベニン)で富と権力を得た奴隷商人一族の繁栄と没落を描いたこの作品は、アフリカ現地人化した一族の描写と相まってむしろアフリカ文学に分類すべきかもしれません。
 主人公フランシスコ・マノエル・ダ・シルヴァのモデルであるフランシスコ・フェリクス・デ・ソウザはブラジル北東部のバイーア出身の奴隷商人で、年代は変更されているものの、主人公とほぼ同様の一生を送っています。ただしあとがきの解説によるとこの年代の変更はかなり重要で、英国が大西洋の奴隷貿易を違法化し、またポルトガル王室がナポレオンの侵攻を逃れてブラジルに移転した1808年の前後どちらに彼が奴隷貿易を始めていたかにより、彼の行為の解釈に差が出てくる事になります。彼はダホメーの王子(後のゲゾ王)によるクーデターを支援する事で王国における特権的地位を得て、奴隷売買によって繁栄を極め現地の女性に多くの子を産ませますが、やがて英国を始めとする欧米諸国による奴隷貿易排除の機運によって落ち目となり、最後は破産状態にまで落ちぶれて死を迎えます。しかしながら彼の一族はその後もダホメー王国内で一定の地位を占め続け、現在でもその子孫を辿る事が出来ます。
 ところでダホメー王国はアフリカ現地人による国家でありながら奴隷貿易によって栄えた専制君主国家であり、特にゲゾ王の時代には周辺国との戦争を盛んに行って得た捕虜を奴隷として新大陸に輸出する事により大いに繁栄していました。つまり彼らは新大陸における奴隷制度の共犯者であり、その残虐性も相まって周辺部族に憎悪された結果、19世紀末に周辺部族の傭兵からなるフランス軍によって滅ぼされています。なお、このダホメー王国の妙に可愛い象の国旗が、最近になってネットで話題となっているようです。この小説の中で囚われた前王を見ながらゲゾ王がマノエルに言った「ハイエナが吠えるが、象は傍らを通り過ぎる」と何らかの関係があるのでしょうか?
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