前日島 (ウンベルト・エーコ 著:文藝春秋)

 「薔薇の名前」、「フーコーの振り子」で有名なウンベルト・エーコですが、難解という評判に身構えていてこれまでは彼の作品を敬遠し続けてきました。今回たまたまこの「前日島」を図書館で見かけて借りてきましたが、なるほど評判通りの難解さでした。
 時代は17世紀、南太平洋で難破した青年ロベルトが島近くの浅瀬で立ち往生していた謎の無人船ダフネに入り込んでからの行動(というよりむしろ回想と妄想)を描いており、ロベルトが過去を回想する部分と船上での実際の行動部分とがリンクしながら交互に進んでいきます。しかし実のところ船上でのロベルトは回想と妄想以外はほとんど何もしておらず、ダフネ船内に隠れていたカスパル神父も途中から綺麗に消え失せて、彼の存在すらロベルトの妄想の一部なのではと思えるほどです。
 ロベルトが(ヨーロッパから見て)地球の裏側まで旅する原因となった経度測定の問題は、作品にも書かれている通り実際に遠洋航海さらには世界地図の作製における最大の難問でした。この問題は非常に離れた二地点において「同時」をどのように確保できるかという問題であり、最終的な解決は船上で使用できる精密時計の完成を待つ事になります。そこで「共感の粉」による同時性の確保という話になる訳ですが、粉の作用原理の「科学的」説明を読む限り、距離が離れればそれだけ時差が生じてうまく同時性が保てないのではないでしょうか?
ロベルトが父に連れられて初めて従軍したマントヴァ継承戦争におけるカザーレ攻防戦は、戦争自体はかなりマイナーでのどかなものですがフランスとスペインとの代理戦争であり、リシュリューやマザランといった三銃士でお馴染みの有名人が登場してきます。実は私自身このマントヴァ継承戦争に関して全く無知で、初めのうちは有名人を舞台に出すための架空の話かと思ったくらいでしたが、実際には正に作中に書かれている通りだったようです。この戦争に関して詳しい解説を見つけたのでリンクしておきます。マントヴァ継承戦争
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