大学入試の偏差値法に関するネット上の俗説と現実

 多くの私立大学の入学試験では受験生が受ける科目を選べる選択科目が存在し、英語などの必修科目と合わせて合否が判定されています。当然の事ながら、選択科目によって問題の難易度に差があるため(そもそも科目も受験生の母集団も異なるので、本当は難易度の比較のしようがない)、試験の素点をそのまま合計するのではなく、何らかの得点調整が必要になります。その調整方法として上智大学を筆頭とする多くの私立大学で用いられているのが「偏差値法」です。しかしながら、これに関してネットで検索して出てくる情報を見る限り、受験生だけではなく高校教師や予備校講師などの受験指導する立場の人さえもが、偏差値法について正しく理解しておらず、誤解に基づく怪説が流布されているようです。
 「偏差値法」は基本的に、各科目の全受験者の素点から平均点と標準偏差を計算し、それによって求まる各受験者の偏差値を受験科目で合計して得られる数値を、その受験者の得点とみなす方法です。もちろん、受験科目によって満点が異なる場合は、その分の重みを変えて合計します。例えば100点満点と150点満点の科目がある場合は、150点満点の科目の偏差値を1.5倍して加える事になります。また、大学によって偏差値の値をそのまま使うのか、あるいはそれを一次変換した値にするのかは差があるようですが、一次変換する場合は全科目に関して同じ変換をするため、受験者の換算点による順序はどちらで並べても同じになります。具体的な数式で書くと、
100点満点の試験でのある受験者の素点をXとし、その試験の平均点をM, 標準偏差をSとすると、その受験者の偏差値Zは
     Z=100+10(X-M)/S
と計算されます。例えば平均点が65点で標準偏差が15点の試験で80点を取った受験生の偏差値は、
     Z=50+10*(80-65)/15=50+10=60
となります。そして例えば英語が150点満点で国語と世界史が100点満点の場合、英語の偏差値が60, 国語の偏差値が55で世界史の偏差値が65なら、最終的な換算点は
     60*1.5+55+65=90+55+65=210点
と計算されます。
大学によっては、上の式の係数10を少し変えて、例えば
     Z=50+20(X-S)/50
と換算している場合もあります。この場合も、すべての科目で係数を一斉に10から20に変えているので、換算点の値は変わっても受験者の順番は偏差値をそのまま使った場合と完全に一致しています。

各科目ごとの標準偏差は、その科目の全受験者の粗点分布によって変わってきますが、通常の一山分布をしているなら、100点満点で20点程度と考えられます。ここで重要なのは、平均点だけではなく標準偏差の大小によって平均点から離れている素点の換算点が変わってくる事です。

さて、ネット上でよく見られる謎の主張は、「偏差値法の結果、各科目をむらなく得点する受験者の方が、得意不得意がある受験者より有利になる」というものです。これはよほど極端な状況を除いてほぼあり得ず、特に有利不利はありません。有利不利が出るのは、例えば平均点が50点よりかなり高く、しかも得意科目では100点だが不得意科目では0点といったほぼありえない状況です。この場合でも、逆に平均点が50点より低ければ、むしろ得意不得意があった方が有利に働きます。現実的に得意不得意科目がある受験者とない受験者で差が出るとしたら、自分の得意科目の標準偏差と不得意科目の標準偏差とが大きく異なる場合のみでしょう。
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