恒星の位置に関する二題

 宇宙観測の技術は近年になって長足の進歩を遂げ、昔では到底不可能と思われていたようなデータが得られるようになると共に、過去の観測データの更新によって以前に通説となっていた事が間違っていたと判明する場合も増えてきています。ここでは、Wikipedeiaその他を読んでいるうちに私が「発見」した、恒星の位置に関する話題を二つ取り上げてみます。
 1.「恒星」といっても実際には銀河系の中を色々な方向に運動しており、一方で太陽系自身もまた運動をしているために、長期的には恒星の相対位置は段々と変わっていきます。そのため、「太陽系に一番近い恒星」もまた、現在のプロクシマ・ケンタウリ(Cen alpha C)から変わって行き、一方で過去には別の恒星が太陽に接近していた事もありました。
 プロクシマ・ケンタウリは現在太陽から4.22光年の距離にありますが、現在は5.9光年離れているバーナード星が、1万年後には3.8光年と現在のプロクシマよりも太陽系に近づく事になります。この事実は以前から知っていたのですが、実は現在は4.37光年離れているCen alpha(これ自身がAB二星からなる連星系ですが、太陽系からの距離と比較すれば無視できるほどしか離れていない)もまた太陽系に近づきつつあり、2万5千年後におよそ3光年にまで接近します。プロクシマがCen alpha ABの周囲を公転する周期は100万年ほどとされているので、2万5千年後にはまだほとんど相対位置を変えておらず、従ってこの時点ではプロクシマがやはり「太陽系に一番近い恒星」のままでしょう。
 ここまではそれほどでもないのですが、実はHipparcos衛星による高精度の観測により、Gliese 710という恒星が136万年後にはわずか1.1光年まで太陽系に接近する事が判りました。(ただし誤差がかなり大きく、0.52光年から1.68光年と幅があります。)この恒星は現在はへびつかい座にある、太陽系からは63光年離れた9.6等星ですが、プロクシマやバーナード星に比べると絶対等級も8.7等とかなり明るく、これから計算すると最接近時には1.6等級となります。さらにここまで接近すると、太陽系のはるか外縁を取り巻くオールトの雲に重力的な影響を及ぼし、太陽系に多くの彗星を落下させる事になるだろうとされています。
 さらにもう一つびっくりしたのは、有名な食変光星であるアルゴル(Per beta)が、730万年前に太陽系に9.8光年まで接近していたというデータです。9.8光年という距離は現在のシリウスよりも遠いのですが、アルゴルの主星はシリウスよりも明るいB型主系列星であり、現在の絶対等級から推測するとその当時はシリウスより明るい-3等級程度で輝いていた事になります。さらに言えば、「アルゴル・パラドックス」の名で知られるように、近接連星では質量交換が行われており、そのため過去には伴星の方が先に巨星進化して現在の主星よりも明るかった可能性があるため、そうなるとさらに明るく見えていたのかもしれません。

 2.いわゆる二重星は、実際に連星系を成している場合と、実際には遠い星が偶然天球上で接近して見えている場合とがあり、北斗七星の柄の部分にあるミザール・アルコルのペアは、偶然に接近して見えているに過ぎないと、通俗天文書には書かれていました。しかしこれは必ずしも正しくなかったようです。
 北斗七星の両端の二星を除いた五つの恒星は、実際にも互いの距離が接近しており、同時期に生まれて同じ方向に進んでいる、いわゆる運動星団を成している事が知られています。実はアルコルもまたミザールと同じ運動星団に属しており、Hipparcos衛星の観測によると両者の距離は3光年しか離れていません。もし、両者が太陽から等距離にあるならば、天球上の距離から計算すると両者の距離は0.27光年となるので、実際にはアルコルの方が太陽から見てミザールの向こう側にあるのは確かなのですが、3光年というのは宇宙的な距離としてはとても近く、両者に重力的な結合がないとは言い切れません。もし実際に連星系を成しているのなら、公転周期は最小でも50万年という事ですが、これだけ離れていると、いずれは他の恒星からの摂動によって連星系は安定に存在できないと思われます。

追記:この記事を書いたあとでたまたま知ったのですが、小型望遠鏡で観測できる最美の二重星の一つとされるアルビレオ(Cyg beta)もまた、現在では実際の連星であることが判っているようでびっくりしました。こちらも以前は「見掛け上の二重星」の代表例とされていたものですが、Hipparcos衛星の観測によれば、ミザール・アルコルのペア」よりもはっきりとした連星系のようです。
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