フリアとシナリオライター (マリオ・バルガス=リョサ著:国書刊行会)

 ペルーの大作家が1977年に書いたユーモア小説で、主人公と義理の叔母フリアとの恋愛騒動の章と天才的ドラマ作家ペドロ・カマーチョによるラジオドラマの作中話章とが交互に描かれていく小説です。フリアパートはバルガス=リョサ本人の半ば自伝であり、この小説の発表後に前夫人で義理叔母であるフリアから名誉棄損で訴えられたという落ちが付いています。10歳以上年上のしかも親戚の女性との恋愛という事で当然両親からは猛反対され、その騒動と駆け落ち結婚の顛末が興味深いのですが、フリアはかなり魅力的な女性として描かれているので、プライバシー侵害ならともかく名誉棄損は当たらないような気がします。
 一方でラジオドラマパートの章は、特に初めの数話は短編小説として非常に面白くて読んでいて引き込まれました。二話目の主人公リトゥーマ軍曹はバルガス=リョサの他のいくつかの作品にも脇役として登場する人物であるため、てっきり主人公と同じ世界の話と思ってこの辺りまでは読み進んでいて、フリアパートの方でそれまでのラジオドラマに対する視聴者の反応の良さが書かれて初めて作中話である事を理解したほどです。これらのドラマはどうやら少なくとも4つが同時並行的に放送されており、ボリビアから来た「天才」シナリオライターのペドロ・カマーチョが超人的なペースですべてのシナリオを書き続けています。しかし途中から別々のドラマの登場人物が混じり合い、さらには本来別々の人物が一人になったりして段々とドラマシナリオが混乱していきます。これはドラマやコミックなどで良くあるスターシステムとは異なり、自身で誰が誰なのか判らなくなってきたペドロ・カマーチョの混乱によるものであり、それを自覚した彼が登場人物整理のための(ドラマ上の)大虐殺を毎回行うようになって大混乱に陥り、放送局に苦情が殺到したあげくに遂には彼は精神病院送りとなってしまいます。
 実の処、ドラマの登場人物の混乱自体は日本のコミック等でもしばしばある事であり、さらに死者が平然と生き返るのも一部コミックではしばしばみられる現象なので、読んでいる私としては未来のそれらの風潮を予見した皮肉なのではとすら感じました。一方で途中から顕著になる主人公の反社会的行動の方が気になり、さらに最後の数話で繰り返させる天災や人災による登場人物全滅はさすがにあり得ない展開です。また、毎回の結末がいわゆる「女か虎か」パターンのリドルストーリーとなっているのが気になります。これは南米のラジオドラマでは普通なのでしょうか?それからペドロ・カマーチョの反アルゼンチン振りは一体何が原因だったのでしょうね。
 最後の後日談の部分ですっかり落ちぶれて再登場したペドロ・カマーチョが、主人公の事をかたくなに認識しなかったのは、実際に精神を病んだ結果記憶を失った可能性もありますが、むしろ落ちぶれた自分を認めたくなかったという事なのだと思います。
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