ヘルハウンド・プロジェクト (ロン・グーラート著)

 所謂「米文学」には含まれないパルプフィクションやアメコミなどのサブカルチャー系では、昔から「もしアメリカが独裁国家となったら」というテーマの作品が書かれていました。以前に紹介したジャスティスリーグの「より良き世界」やそこから始まるカドムスアークものなどはその一例です。これまではそれらはあくまでも「うっかり間違うとこうなってしまうよ」という警告に過ぎなかったのですが、ここ数週間のアメリカやさらには日本の状況を見るにつけ、「マンガが現実と化す」事が本当に起こりつつあると感じています。今回取り上げる「ヘルハウンド・プロジェクト」もまさにそういった作品の一つです。
 この作品は新潮文庫の「クリスマス13の戦慄」という短篇集に収録された中編SFで、他の収録作と比べて特に印象に残っています。この短編集には作者紹介がないため名前の正しい綴りすらわからず、以前に行った日本語表記での検索でも何も分からなかったのですが、この記事を書くために再度検索して見つけた記載を基にして英語綴りで再度検索した結果、英語版のWikipediaの記事を発見しました。Ron Goulart
この記事によると別名で書いていたアメコミ作家としての方が有名なようで、なるほどだからこそのこのテイストなのでしょう。この主人公とヒロインによる続編シリーズがあっても不思議ない気がしますが、残念ながら彼の小説作品はほぼ翻訳されていないようです。
 近未来(2030年)の荒廃したアメリカにおいて、合衆国政府以上の力を持つ兵器産業会社の秘密プロジェクト「ヘルハウンド」を探るために反政府組織のスパイが潜入するという筋自体は、いかにもアメコミ的で痛快ではあるものの極めてありがちで特にこの作品が目立っている訳でもないのですが、今回わざわざこの作品を取り上げた理由は、きわめて今日的である秘密プロジェクトの内容です。 ヘルハウンドとは昆虫大の巡航ミサイルによる対個人の暗殺専用兵器であり、特筆すべきは与えられたデータによって対象の個人を自動的に絞り込んで追尾し、たとえ逃げ隠れしてもそれを追いかけて最後には確実に仕留める、という点です。正に「地獄の猟犬」の名にふさわしいその実態は、書かれた当時には理念上のみの実現不可能なSF的兵器でした。しかし数日前にまさにアメリカ国防総省が昆虫大のスパイ用ドローンの開発を目指しているという記事があがり、一方で、これも以前に紹介した「ラブスター博士の最後の発見」にも書いたように、ネット上での個人データの解析や監視カメラ網の広がりによって個人の行動特定が相当のレベルで可能になっている事を考えると、そう遠くない未来にほぼ同タイプの暗殺兵器が開発可能なのではと思われ、この作品の世界が現実となる日が来てしまうのかもしれません。
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