ベータ2のバラッド (サミュエル・R・ディレイニー他 著:国書刊行会)

 以前に紹介したヴィーナス・プラスXと同じ「未来の文学」シリーズの一冊で、1960-70年代に書かれたいわゆるニューウェーブSFを中心とする6編からなるアンソロジーです。私自身はニューウェーブSFは肌が合わず敬遠ぎみのジャンルで、実際この収録作の中にもまったく理解できないものもありました。以下収録作それぞれの紹介と感想です。
 ベータ2のバラッド (サミュエル・R・ディレイニー)
表題作のこの中編は、ディレイニーの最も有名な作品である「バベル17」の一年前に書かれたという事ですが、こちらの酷評ほどではないにせよ、名作とは言い難い出来に感じます。個人的には、船長の航星日誌といった記録文書に「砂漠」を始めとする詩的表現を使うというのがそもそも受け入れられず、物語世界に浸れなかったため理解しがたい部分があった点も評価が低い理由です。一方で、ネットで検索して見つけた感想中には、こちらのように「本当に私と同じテキストを読んでいるのだろうか?」と疑問を持ってしまったものもありました。

 四色問題  (バリントン・ベイリー)
これはある意味典型的「ニューウエーブSF」と思われますが、筋といった筋が存在せず私にはほぼ理解できなかった作品です。「四色問題」そのものは有名な数学の問題で、最終的にいわゆる「エレガントな証明」ではなくコンピュータによる虱潰しという力業によって解決された難問なのですが、球面とは異なるトポロジーを持つ閉曲面上では5色以上必要な例が存在するといった事実と話が絡んでくるかと思うとそうでもなく、途中に挟まれる学問的考察部分も正直言って「ソーカル論文」を思わせる難解な術語をちりばめたこけおどしにしか見えませんでした。

 降誕祭前夜 (キーツ・ロバーツ)
この作者が得意とする「歴史改編もの」の一つで、第二次大戦前の英国に親独政府が成立し、両国による連合帝国が誕生している世界の話です。英国の大臣秘書官である主人公がレジスタンスの罠から逃れようとしながら却ってその思惑通りに行動してしまうという展開は、正に「孔明の罠」を思わせます。

 プリティ・マギー・マネーアイズ(ハーラン・エリスン)
著者のエリスンは有名なSF作家ですが、この作品自体はSFではなく怪奇小説です。実際にこのようなあり得ない連続大当たりが続いた場合、現実のカジノもこのように対応するのでしょうか。

 ハートフォード手稿 (リチャード・カウパー)
収録作のうちで、この作品が一番面白く感じました。以前に紹介したタイム・シップスペースマシンと同じくウェルズの「タイムマシン」の後日談となっているオマージュで、やはりウェルズ作品の中でも「タイムマシン」は別格の扱いなのかもしれません。

 時の探検家たち (H. G. ウェルズ)
そのウェルズの作品もここに収められており、この作品は「タイムマシン」の初期ヴァージョンとの事です。始めの状態では、タイムトラベルをいわば「外から見た」形で描かれていた作品だったとはやや意外でした。
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