不思議惑星キン・ザ・ザ

 以前にCandymanさんのブログで取り上げられていたこの作品をレンタルDVDで見つけ、さっそく借りてきました。噂にたがわず、さすがロシアという傑作(怪作)映画でした。粗筋等は、こちらのオフィシャルサイトをどうぞ。
 ハリウッドの大作SF映画とは対照的に、映像的にはお金を掛けていなそうなこの映画ですが、その社会風刺は見事です。作られたのは1986年で、ソ連ではゴルバチョフが共産党書記長になってペレストロイカが始まり、それまでは公に描く事の出来なかったソビエト社会の矛盾だらけの現実が、次々と明らかにされ始めた頃です。とはいってもこの作品、問題を告発する社会派ドキュメンタリーとは全く違い、あくまでも緩くシュールなコメディタッチの話が展開してゆきます。
 まず、主人公のマシコフが良い味を出しています。冬のモスクワから砂漠の真ん中に突然ワープしても全く動ぜず、次々と起こる不条理な出来事に対しても、「人生こんなものさ」とでも言わんばかりの悠然とした態度は、ロシア人ならではのおおらかさです。また、一緒に砂漠の中に放り出されたグルジア人青年ゲデバンも、謙虚で頼りないが好奇心旺盛な好人物です。そもそもこの二人は、異星人二人組に散々騙されていながら、因果応報的に捕えられ、さらにはアルファ星でサボテンに変えられてしまった彼らを救うために、目の前に提示された地球に帰る道を断るなど、無類のお人よしです。
 プリュグ星の釣鐘型宇宙船のボロい作りにも、思わず笑ってしまいます。クレムリンにある世界最大の鐘(ただし完成前に壊れている)「鐘の皇帝」を思い出させますが、このデザインの無骨なダサさもソ連時代の機械製品の特徴です。
 しかし何と言っても笑えるのは、延々と繰り広げられるプリュグ星の間抜けな風習です。「クー」と「キュー」の二語だけでほとんどの用が済んでしまう日常会話や、なぜかマッチに異常な価値があり、それを手に入れるためなら相手を騙す事など何とも思わなかったり、ステテコの色による身分差別とか、さらに「PJさま」への意味不明の個人崇拝等、一見有り得ないほど馬鹿げている因習ですが、恐らく閉塞したソ連社会を風刺しているんだと思われます。また、卵型宇宙船に乗り、妙な被りものをした「権力者」は、色々と難癖をつけて賄賂を要求する悪徳警官を容易に想像させますが、より一般に小役人の象徴でしょうか。
 一方で一見天国のようなアルファ星は、西側先進国がモデルでしょうか。きれいな空気を汚さないようにと、マシコフたちにガスマスクをするように求め、プリュグ人は救いようがないからサボテンに変った方が幸せだ、と言い切る彼らは、自分たちの傲慢さに気が付かないほどに傲慢です。確かに多くの問題点を抱えているとは言え、それまで曲がりなりにも何十年も続いてきた社会主義体制を完全否定し、自分たちの価値観だけが全てだと押し付ける欧米諸国への、ロシア人の複雑な思いを反映しているように思います。
 最初に登場した空間移動装置を持った異星人の物言いは、何とも哲学的です。その彼が、最後にマシコフらを救ってくれるのは、無私の善意に対する神の報いのようにも思えます。

注記:この記事は、旧ブログ「Babylon5以外のメモ」のキャッシュからコピーしたものです。(2010/04/17)
スポンサーサイト

テーマ:映画 - ジャンル:映画

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

X^2

Author:X^2
このブログは、旧ブログ
Babylon5以外のメモ
からの移転先として立ち上げました
。連動するホームページである
Babylon5 Episode Guide
にもどうぞ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
リンク