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バベル-17 (サミュエル・R・ディレーニー 著:ハヤカワSFシリーズ)

 以前に紹介した「ベータ2のバラッド」の作者の代表作です。実はかなり以前から作品名は知っていたものの、実際に読んだのは今回が初めてで、「美女艦長が率いる宇宙船の、異形のエイリアン(実際には肉体改造をした人類)を交えたクルーの冒険」という典型的なスペース・オペラの形式を持ちながら、ニューウエーブSF特有のアイディアが主題となっている不思議な作品でした。
 主題となるインベーダーの謎の通信「バベル-17」とはどうやら人造言語であり、それも通常の言語ではなくむしろコンピュータ言語に近いものと思われます。それは「私」(一人称単数)の概念が存在しない言語であるとか情報伝達速度が非常に速いという点だけでなく、それを受け取った相手の人格を乗っ取って思い通りに行動させるというコンピュータウイルスを連想させる能力に現れており、それを武器として用いるというアイディアは現在を先取りしている感があります。また登場する宇宙船の管制システムも海軍の戦艦を模した古典的スペースオペラのそれとはかなり異なり、三名の航宙士の精神的な繋がりやさらには肉体的には死亡した「霊体人」のクルーが重要な役割を持つなど、いかにもニューウェーブ的なものになっています。
 一方で物語世界の舞台は「人類が進出した五つの銀河系」という非常に広い宇宙空間になっているのですが、物語的にはそのような広大さは感じられません。人類を含めて7種族しか宇宙種族が存在しないのですから地球からせいぜい数百光年の範囲の舞台にすれば十分で、ましてや複数銀河にまたがる必要性はまったくないのでは。それに人類自体が整形手術によって自由気ままに姿を変えている一方で、敵対するエイリアン種族も特に異形の種族ではなさそうなので、ランボー号のクルーの方がよほど異形の「エイリアン」のように見えます。地球側の同盟軍とエイリアンとの戦争のそもそもの発端が解らないのですが、「インベーダーの黒い魔手」などと書かれている裏表紙の粗筋とは裏腹に、「地球が善でエイリアンが悪」という描写はなく、実際にもエイリアン側が一方的な侵略者という訳でもなさそうです。そう考えると、主人公の美女艦長リドラ(とそのパートナー)が戦争当事者双方から独立した調停者となるという結末は、初めから十分に予想できたかもしれません。
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