オレンジ党、海へ

 「オレンジ党と黒い釜」、「魔の沼」に続く、「三つの魔法」シリーズの第三話です。オレンジ党の冒険の舞台はさらに広がり、太平洋に面した千葉県外房側の丘陵地が主な舞台となります。
 主人公のルミたちが何度か鳥の幻影を見た直後に、オレンジ党あてに海を臨む丘陵地帯を根城とする「鳥の王」からの助けを求める手紙が幻のような少年によって届けられます。一方で道也の元には、その鳥の王に捕まったという「カモメ」から助けを求める手紙が届き、「鳥の王」と「カモメ」のどちらを信用するべきかオレンジ党だけでなく読者も悩まされることになります。さらには古い魔法の使いてある源先生と配下の西崎ふさ枝のグループや「オレンジ党と黒い釜」にちらりと登場した「緑衣隊」、また「鳥博士」と呼ばれる異端の鳥類学者の石橋幸太郎先生も絡む複雑な構図で、正直なところかなり分かりにくい展開で話が進んでいきます。実は主題となるのは、オレンジ党リーダーである李エルザが、イギリス人の母方の祖母から受け継いだ宝石(正確には宝石そのものではなくそれがもつ不思議な力)の争奪戦であり、「鳥の王」はその力を横取りしようとする僭称者であり、源先生グループもほぼ利用されていただけにすぎません。今作のラストでは、緑衣隊の追跡を逃れたオレンジ党は海に旅立ち、以前の黒い魔法との戦いで亡くなったそれぞれの両親に(彼岸の国で)再会したらしい事が暗示されています。彼らの乗る船の船長として名が出てる「金船長」は、オレンジ党シリーズの前作である短編集「闇の中のオレンジ」に登場する人物のようです。
 こう書いてしまうと物語世界のラストは幻影であり、現実世界ではオレンジ党メンバーは亡くなる形で物語が閉じたようなのですが、実際には第四話「オレンジ党、最後の歌」でオレンジ党メンバーは彼岸の国から何らかの方法で戻ってきて小学校に復帰しています。ただ実はこの第四話は三部作よりずっと後に書かれたものであり、あとがきでは否定しているものの作者の中で一旦物語が終わっていた可能性は十分ありえます。
 ところでグーンの魔物が一旦消えた後でその地に開墾された大鳥村が再び緑衣隊に接収され、一見するとゴルフ場のように見えるが巨大な鳥のような黒い影がいくつも並んでいるという描写は、ほぼ間違いなく成田空港開港に伴う一連の成田闘争を反映しています。現在ではほぼ開港時の紛争は忘れられて、さらなる拡張工事がほぼ平和的に進められている成田空港ですが、この作品が書かれた1983年時点は、まだ間違いなく紛争の記憶が生々しい頃でした。
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