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不安が不安 (ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督:ドイツ映画)

 「シナのルーレット」に続き、その一年前(1975年)に撮られたファスビンダー監督のテレビ用映画です。それもあって、ファスビンダー作品としてはかなり抑えたストーリー展開や描写による上品な社会派ドラマ仕立てとなっています。裕福な家庭の専業主婦マーゴットが2人目の子供を妊娠中に理由の分からない不安に襲われ、出産もそれがさらに酷くなって次第に奇行に走るようになり遂には精神を病む、という粗筋はファスビンダー本人によるオリジナルではなく、ドイツの小都市に住む主婦の実体験に基づく原稿を原作にしたものです。原作者アスタ・シャイプは後にこの原稿を長編小説として出版し、作家としてデヴューしてます。
 この映画に関するネット上の感想をいくつか読んで、かなりはっきりと描かれていて解釈が分かれる余地がなさそうに思える点に関しても、見る人によって結構バラバラの解釈をしているのにやや驚かされました。マーゴットの病気が最初の医者の診断(統合失調症)と二人目の診断(重いうつ病)のどちらなのかなども人に依って書いている事が違うのですが、二人目の医師の診断に従って入院治療した結果、一応は社会復帰している点からすれば、やはり後者が正解なのでしょう。
 マーゴットの感じる不安の正体が何なのかが一番のポイントだと思いますが、この点は少なくとも私の中ではかなり明白で、社会とのつながりを失なっている事に対する焦りによるものと思います。裕福な家庭で実際には仕事を持つ必要がなく、子育てだけをしていればよいというある意味恵まれた立場の専業主婦ですが、裏を返せばその立場はあくまで「夫の妻」あるいは「娘の母親」という他者を介在したものにすぎません。義母や小姑を始めとする他者からは夫の貞淑な妻あるいは娘の良き母親としての振る舞いしか期待されず、彼女自身の社会とのつながりは全く評価の対象とならない、むしろ否定的にみられてしまいます。この辺りはそれこそ近年の日本の女性も同様の思いを感じているのではないでしょうか。それを明確に指摘しているレヴューが見当たらないのはかなり意外です。
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