全く異なるTASとMUD -- "Bem"/「分解宇宙人ベム」の比較

 これまでの記事でも再三書いている通り、本来のアニメ版スタートレック(以下"TAS"と略記)とその日本語版「まんが宇宙大作戦」(以下"MUD")とは、実際には「似て非なる」というより全く異なる別々のシリーズです。それは「紀元三千年・・・」という伝説のオープニングだけの問題ではなく、各々の話の展開においても同様で、TASとMUDでは画面は同じでも登場人物たちが全く別の会話を交わし、起こっている事件の意味も異なってくる事が往々にしてあります。実際にどのくらい違っているかは、yonetchさんのサイト"yonetch Works"の「翻訳ツッコミこーなー」を参照ください。この記事では、その典型的な例として、第二シーズンの"Bem"(分解宇宙人ベム)を取り上げてみたいと思います。なお、以下の TAS元音声とMUDの吹き替えとの比較は、yonetchさんのサイトの記述に基づいています。
 MUDの「分解宇宙人ベム」は、最近になって銀河連盟と友好関係を結んだ惑星パンドロのベム探検隊長が、エンタープライズにオブザーバーとして乗っている所から話が始まります。このベム隊長は、それまでエンタープライズが訪れた惑星には上陸しなかったのに、この話の舞台となる惑星シーターには危険が予想されるにも関わらず、突如自ら上陸を申し出ます。彼がシーターで起こした事件によって、その正体が「分解宇宙人」である事が判るのですが、惑星での彼はしつけの悪い我侭な子供の様に振る舞い、その行動の理由が理解できないため、観ていて非常にイライラさせられます。
 ところがその原語版であるTAS"Bem"では、どうやらBemは惑星シーターの原住民が「神」に見守られている事を知っていて、カークらがその原住民と神にどのように対処するのかを見たいがために一緒に惑星に降りた事が、彼の話している内容から強く示唆されています。転送でKirkらが水中に落ちたのも、実は初めからBemが仕組んだものでした。より正確に言うと、一見一個体に見えるPandro人?は実は独立した小さな構成体の集合体であり、 BemはKirkらと接触して観察し、彼らが交流するに値するかを判断するために、仮に構成された群体だったようです。彼が会話の中で自分を"this one"と三人称で話しているのも、その現れでしょう。そのため、最後に判断の過ちを犯したと判った仮の個体を、解体するとまで言っています。そういった点から考えると、Pandroの群体生命体はBorgよりも、Andromedaに登場する「部品同盟」に似た性格を持っているようです。あるいは、「Pandro人全体」に対応する概念を"Planet Pandro"と呼んでいる点からすると、「ソラリスの海」タイプかもしれません。
 このように考えると、TASでのこの話は、連邦の普通の種族代表のKirk, Spockと、群体生命であるPandro人、そして惑星の神という、全く異なる文明を持つ三つの種族が接触し、初めトラブルになりながらも相互理解する、という中々深い内容だった事になります。また他にも、yonetchさんのツッコミにある通り、「なぜKirkとSpockが上陸するといつもトラブルに巻き込まれるのか」という楽屋落ちめいた哲学問答が二人の間で交わされるなど、TASとMUDの内容は大きく異なっています。

 以下はいずれもyonetchさんのサイトにある、MUDでのベム隊長の台詞の抜書きと、対応するTASの台詞、そしてその直訳です。

 惑星シーターに降りたいと申し出たベムが、訝るカークにその理由を説明する場面。
MUD -- 「実は今までは怖かったけど、勇気を奮い起こします。ですから今度こそ、一緒に上陸させてください。私は決して足手まといにはなりません。」
TAS -- "Every planet is dangerous to the ignorant. This one has decided that the nexus is now. Must observe workings of starship and crew. "
(これまでの星は、無学なものには危険だったんでね。今度の惑星こそ、適当だと判断したんです。艦とクルーの働きをつぶさに見学させていただかねば。)

 惑星の原住民に一緒に捕えられたカークとスポックへの、ベムの台詞。
MUD -- 「そう思っただけでは何の役にも立ちません。我がパンドロ政府は怒るかもしれませんよ。優秀な船長と聞いて、私は一緒にきた。ところがどうですか。このザマですね。」
TAS -- "Good intentions, Kirk Captain, are not enough. Planet Pandro will be much displeased. Starfleet told us you are best captain in fleet. Actions to date belie this."
(失敗しましたでは困りますよ、カーク船長。惑星パンドロは大いに不快感を呈するでしょう。宇宙艦隊によれば、あなたは艦隊随一の船長との触れ込みでした。しかし期待はずれだ。)

 バラバラになって檻から抜け出したベムが、カークに言った台詞。
MUD -- 「パンドロ政府は私のことなど全然心配していません。私は愚かな無能者として見捨てられてしまったんですよ。だからこそ、こうして私は自分からあなた方の探検に参加したんです。これも全て自分を試すためなんです。」
TAS -- "Planet Pandro is unconcerned as to fate of this one. Pandro will not have dealings with inefficient and inferior species. You have failed everything you have attempted and you have not been able to handle local aborigines. "
(この者のことなどどうでもよろしい。惑星パンドロは無能で下等な種族には構ってられません。あなたのやることなすこと全て裏目で、ここの原住民との接触にも失敗した。)

 惑星の「神」と平和裏な接触に成功したカークを見て、反省したベムの台詞。
MUD -- 「それほどまでの船長の気持ちもわからず、任務に協力するどころか、私は皆さんのジャマをしてしまいました。分解して私死んでしまいます。私など生きている価値もありません。この体、皆さんにジャマになります。分解してバラッバラなってしまいます。」
TAS -- "This one has greatly erred. The mission was to judge, and right of judgement was not conferred. This one must disassemble unity. Never to exist again as a cooperation. This unity is defective. This unity must cease to exist. "
(この者は大きな過ちを犯しました。任務は鑑定であり、裁判ではない。この者は群体を解きます。二度とひとつにはなりません。この者は無能だ。存在を停止すべきだ。)
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