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四人の交差点 (トンミ・キンヌネン著:新潮クレスト・ブックス)

 トンミ・キンヌネンはフィンランド北部の小都市クーサモ出身で、2014年に発表された本作でデヴューした作家です。訳者あとがきによると、この作品はフィンランド国内で大きな反響を呼び、ベストセラーランキングで13週連続一位となっただけでなく複数の文学賞を受け、さらには舞台化もされたとの事です。
 作者の出身地クーサモをモデルとするロシア国境近くの街が物語の舞台であり、そこに家を建てて暮らす一家の100年に渡る生き様を、祖母マリア・母ラハヤ・息子の妻カーリナという3人の女性とラハヤの夫オンニをそれぞれ主人公とする4つの章に分けて、飛び飛びのある時点の出来事が描かれていきます。主人公が同一であるそれぞれの章内では時系列に沿った出来事が描かれていますが、別の章では再び古い出来事から順に描かれているため、同一の出来事が別々の視点から描かれることもあり、両方の見方を合わせる事によってある事件の真相が明らかになります。ただしマリアとオンニはカーリナがこの家に嫁いでくる以前に死亡しており、カーリナの章の中では彼らが残した遺品や手紙によって過去が語られています。
 四人の人生を結びつける「交差点」としての役割を果たしているのが、建物としての家そのものです。この地域唯一の助産婦として働き続け未婚のまま娘を育てる強い女性であるマリアが建てた家は、彼女の強迫観念に駆られるような建て増しを繰り返して巨大となっていきますが、ソ連との「継続戦争」の戦況悪化によってその地方も戦場と化し、一家が強制疎開させられている間に焼け落ちてしまいます。その後同じ場所にラハヤが再建した新たな家では、今度は彼女が主として君臨しますが、彼女の家への執着と家族への干渉によって夫のオンニや嫁のカーリナは苦しめられていきます。この辺りのラハヤの描写はいわゆる「毒親」そのものであり、どこの国の家族でも同じような問題が起こっているのだと考えさせられます。
 かなり意外に感じたのが、フィンランドでは1970年代まで同性愛が非合法だったという点です。北欧というと性的な面も含め非常にリベラルで寛容な社会というイメージがあったのですが、フィンランドでは1971年に法律が廃止されるまで、男女を問わず同性愛は刑事罰の対象となる犯罪であり、さらにその後も1981年までは病気の一種として分類されていた(従って「治療」の対象だった)との事です。これが正にオンニの生涯に影を落とし続けて遂には彼の自殺の原因となり、さらにそこまで彼を追い込んだラハヤも自責の念に苦しみ続ける結果となりました。
 また、物語の重要な背景となっているのが、継続戦争(第二次ソフィン戦争)です。1939年の冬戦争(第一次ソフィン戦争)によってカレリア地方を含む領土を失ったフィンランドは、ナチスドイツのソ連侵攻に乗る形で1941年6月に対ソ戦争に踏み切り、序盤の勝利で失った領土を回復するものの、結局は再び敗北してさらにソ連に対して領土の割譲と莫大な賠償を払う羽目になり、ソ連の顔色を窺う外交を余儀なくされました。
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