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トリポッド 3 潜入 (ジョン・クリストファー著:ハヤカワ文庫SF)

 前話でトリポッド支配に対するレジスタンス組織の拠点である「白い山」(おそらくモンブラン)にたどり着いた主人公ウィルとヘンリー、ビーンポールですが、実はレジスタンス指導者すらトリポッド自体が自律機械なのかそれとも他の生物が乗っているのかも解ってない状態でした。それを含めて敵の正体や弱点を探るため、ウィルらはドイツのライン川?流域のどこかにあるトリポッドの都市に競技大会の優勝者として潜入作戦を行います。
 この大会は体力のある若者を選抜して都市での奴隷として使うためのもので、いくつかもの種目があるものの、優勝するためには相当の運動能力が必要です。レジスタンス拠点が空気の薄い高山にあるため、そこで生活しているレジスタンスたちは平地の人間より体力があり、従って大会でアドバンテージがあるというのはなるほどの説明ですが、実はこの話は前話から1年しか経っておらず、それだけの期間でウィルらが高山に適応したのかは正直疑問が残ります。
 都市への潜入に成功した結果、敵の正体は三本足で目も三つある宇宙人と判明します。となるとおそらく三本脚のトリポッドの姿も、人間型ロボットと同様に作り主の姿に模式的に似せたものなのでしょう。都市の中は重力が強められ、大気もおそらく塩素系と思われる緑色のガスに入れ替えられており、人間の奴隷たちは頭部を透明のヘルメットで覆った形で主人に仕えていますが、高重力と暑さや有毒な大気に肌をさらすことによって体力を奪われ、1-2年で使い捨てされてしまいます。それでもキャップによって洗脳された奴隷たちは喜んで主人たちに仕えています。さらにおぞましいのは、美人大会の優勝者として都市に連れてこられた少女たちの運命です。彼女らは労働力として連れてこられたのではなく、人間種の「美の標本」として生きていた当時のままの姿で(殺されて)展示されています。そしてウィルはその標本の中に前話で淡い恋に落ちたエロワーズの姿を見出しました。
 ウィルの主人はこの種族としては進歩的で善良であり、奴隷であるウィルを可能な限り労わり、「友情」をもって接しています。さらに人類の文明や生命に関しても興味を持ち、いずれ地球を自分たちの世界に「テラフォーム」した後も人類を含む地球の生態系を絶滅させずにサンクチュアリを残すべきと考えています。しかし同時に、自分たち種族が地球を支配する事自体には疑問を持っておらず、彼の主張はあくまで「主人たち」目線での人道主義に過ぎません。ウィルが彼の考えに対して全く共感を示さないのは当然なのですが、実はこれは現実世界の人間による他の生物種に対する共感や保護も同様であり、さらに言えば例えばアメリカやオーストラリア先住民に対する進歩的な白人文化人の目線とも重なっています。
 それから、ウィルの主人の話によって地球征服時の経緯がある程度明らかにされますが、その内容は「トリポッド1」の記述とやや食い違っています。正面切っての武力侵略ではなく、映像による洗脳という搦め手からというのは同じなのですが、こちらの記述では洗脳自体は数日で効果が切れるので初期からキャップをかぶせた事になっています。この辺りは実際には「トリポッド1」の方が後で書かれたので、時代に合わせて微修正されたのでしょう。また追い詰められた人類も1年以上抵抗を続け、生き残った原潜からの核ミサイル攻撃で反撃したことも語られており、こちらは「トリポッド1」での描写があくまで子供目線だったために見えていなかったと解釈すべきでしょう。
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